「痕跡は残らなかった」ディスクローザー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
痕跡は残らなかった
前に韓国映画で『最後まで行く』というのがあり(今年、藤井道人監督&岡田准一主演で日本リメイク版が公開予定)、似通ったプロットと思ったが、全然違った。
あちらは汚職まみれの悪徳刑事が、自身が起こしたヤバい一件を隠蔽しようと奔走、次から次へと災難に見舞われる様をスリリングに。
こちらは真面目な刑事。手柄も立て、仲間や上司からも信頼厚い。
同僚たちとの飲み会終え、飲酒運転の帰り道、自転車に乗った少年に接触。少年は打ち所悪く、意識不明。通報するも、“発見者”として嘘を付く。
少年の母親から感謝され、英雄として称えられるも、徐々に自責の念に囚われていく。
そんな不審さに、若い刑事が疑いを持ち…。
根っからの悪い刑事ではないのだ。熱い正義感を持ち、物事の善し悪しの判断も付く。
つい、魔が差して…。何故あの時嘘を付いたのか、自分でも分からない。
隠蔽してドツボにハマっていくのではなく、苦悩の姿をじっくり描写。ジョエル・エドガートンが熱演。
この主人公刑事の苦悩を軸として、全く思考の違う二人の刑事が交錯。
疑いを持った若い刑事。不正は勿論、些細な事にも異を唱える。
バッドガイのイメージ強いジェイ・コートニーが真摯に演じる。
こういう刑事こそ理想だが、そんな存在は時に組織の目の上のたんこぶになる。
彼の直属の上司のベテラン刑事。何故か主人公を庇うような言動…。
警察の面子や保身優先。その為なら真実を明るみにする事など、下らなく取るに足らない。
主人公が事故を起こした直後、本当の事を打ち明けられていた。が、それを隠蔽。現場の詳しい検証も行わず、後悔し始めた主人公に圧。
「時間と世間が全てを飲み込む。お前も俺も同じだ。世間に飲み込まれ、最後には痕跡など残らない」
主人公に「お前の人生がかかってる」と心配する事を言うが、本心は、警察の信用に関わるから黙ってろ。さらには弱気になった主人公に暴言。
このベテラン刑事がとにかくクズ。トム・ウィルキンソンがさすがの存在感と憎々しさ。
主人公は妻に打ち明ける。妻の反応は…。
自首を決めた主人公。それを巡り、対立する若い刑事とベテラン刑事。口論となり、若い刑事が不祥事を起こしてしまう…。
遂に最悪の不幸が。主人公は少年の母親に打ち明ける…。
地味な作品ながら惹き付けられる話と役者陣の熱演で見応えあった。
が、終盤尻すぼみ気味になったのが惜しい。大風呂敷を広げたものの、期待以上のオチでは無かった。
ベテラン刑事の言葉通りなら皮肉。
痕跡は残らなかった。