「WOWOWにて観賞」ミュージアム shallowwhiteさんの映画レビュー(感想・評価)
WOWOWにて観賞
小栗旬は「絶叫禁止の刑」。
彼だけでなく、日本の若い俳優はやたら叫びすぎ、泣きすぎ。
叫び、涙流せば演技派ってのは舞台の話で、映画は違う形の芸術だろう。
本作の小栗旬は絶叫チャンピオン。未だかつて、これほど主人公が絶叫し続ける映画は見たことがない。
監督も絶叫演技大好きの人だから相乗効果が半端ない。
確かに主人公が置かれる状況はこの上ない窮地だ。正気を失い叫ばざるを得ない心境になろう。
しかし、小栗旬の演技からはマッドネスが見えてこない。見えるのは自己の演技へのナルシズムだ。
妻子が乗った車に体当たりカーチェイスを挑むところはマッドネスだが(妻子が危ないだろう)、そこも必死さのナルシズム芝居だ。
主人公は、犯人より裁きを受け、自身もまた妻子への罪を思い返し懊悩する。
だがしかし、そんなにこの主役が悪い人間に見えるだろうか。仕事にのめり込み息子の誕生日をすっぽかす、運動会に来ないって、そんな大仰な罪なのか。
もっと日常の主人公に闇があったなら成立する話だろうが、その程度のファミリーパパに罪を負わせるのは無理がある。理がないから犯人カエル男もジョーカーやジョン・ドゥー気取りの無理押しにしか見えない。「you complete me」な関係性にはなり得ない。
小栗旬が闇を見せなかったのもナルシズムだろう。もっと己を捨てても良かったのでは。
この映画は、記号的な登場人物と演技、記号的な台詞、記号的なアクション、記号的な雨、と堅苦しいぐらいの『セブン』その他サイコスリラー・ワナビーで突っ込みどころ満載だが、後半の監禁に比重を置いた点は面白い。
終幕の顔を掻く子供の不穏な映像は、「強い悪意に晒されたから紫外線アレルギーになった」という台詞を反映させて、即ちカエル男の再来と言いたいようだが、それって現実の紫外線アレルギーの人に大変失礼じゃないか。最後の最後までズレている。