スポットライト 世紀のスクープのレビュー・感想・評価
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辛かった
これが実話ということが信じたくないというレベルでした。
推定1000人を超えたと言われる被害者、200人にも及ぶ加害者である神父。
信じている宗教というのをいいように利用し、12、3歳の子供を標的にしていく。
もう本当に新聞社の社員たちがすごいと思います。様々な圧力にも打ち勝ち、合っていることを突き通す。
最後に新聞が世に出た時、被害者からの電話が絶えないのが、私的には辛かった。
こんなに言えない人がいたということ、それを言えるようにした新聞を出せて良かったと思う反面、それが現実だということがとんでもなく重いなぁ、と思いました。
すごく重かったし辛かったけど、やり切った達成感も伝わってきて、それが救いでした。
淡々さがリアル
絶対的権力の暗い道に差し込んだ一筋の伝える力
本年度アカデミー賞作品賞受賞作。
カトリック教会の神父たちが約30年以上にも渡って幼児たちに性的虐待をしていた事実を伝えたボストンの地方記者たちの実話に基づく社会派ドラマ。
非常に良かった!
賞を獲ったからじゃなく、小さな存在が絶対的権力に立ち向かう。
その事実に衝撃し、その記者魂に心震える。
地味だとかあちこちで言われてるけど、記者たちが真相に迫っていく様はスリリング、性的虐待をした統計上の神父の人数にはショッキング!
確かに派手ではないが、淡々と丁寧な語り口がこの作品に合っている。
トム・マッカーシーの丹念な演出とオスカーに輝いた緻密なオリジナル脚本の賜物。
ワクワクするようなエンターテイメントもいいが、じっくり見入るのもまた映画の醍醐味。
幼稚園の頃近くに教会があり、カトリック的なミサや懺悔をかじった事はあるが、それがどんなに人の心に根差すものか、幼児だったからか理解出来ぬまま。(幼稚園児のくせに、週何回かのお祈りが面倒臭いとませた記憶しか残ってない)
ましてや信仰心が薄いと言われる日本人にはピンと来ないかもしれない。
しかし、こう考えてみるとどうだろう。
尊敬し、信頼し、心酔してた人から受けた“いたずら”。
信仰という神父と信者の特別な関係、教会という絶対的善と思われている神聖な場。
それに覆い隠れ繰り返された、人の道からも神の道からも外れるおぞましい行為…。
酷い言い方かもしれないが、性的被害者たちはちょっとまともな精神状態じゃない。
でもそれは、心に深い傷痕を残され、狂わせられたからだ。
勿論、教会や神父の全てがそうではない。ほとんどが崇高な場であり、敬愛に値する人たちだろう。
教会や神父に限った事じゃない。ほんの一部…。
権力や絶対的立場を利用した偽善者どもが必ず居る。
教会や神父の悪事を一方的に訴えたものではなく、記者たちに焦点を絞ったのがいい。
彼らのやってる事は、被害者にまた悪夢を思い出させ、傷口を広げているだけかもしれない。
何年も前に投稿の訴えがあったのにも関わらず、その時は気にも留めなかった事実もある。
黙認したという意味では彼らもまた同じ…。
新局長の言葉が響いた。
我々は暗い道を歩いている。今、一筋の光が差した。
調子のいい偽善と思われても仕方ない。
でも、誰かがやらねば。
ここは我々の町。我々の手で真相を!
彼らが掴み取った真相は、“スクープ”とか“暴露”とか“一大スキャンダル”とか下世話なマスコミ言葉じゃない。
ただひたすらの“伝える正義”。
演者全員に賞を与えたい!
熱血記者マーク・ラファロはさすがの巧演。デスクと対立するあるシーンの台詞には胸を打たれた。
かつての鬼の記者で現名デスク、マイケル・キートンのカッコよさにしびれた。(キートンの最近の快進撃は嬉しい限り!)
ただ紅一点の華を添える存在だけじゃない、熱演披露のレイチェル・マクアダムス。
物静かだが口火を切ってくれた局長リーヴ・シュレイバー、最初は非協力的だが本当は熱意ある弁護士スタンリー・トゥッチ…メインから脇まで全員が名演!
実力派たちのアンサンブルも、映画鑑賞最高の旨味の一つ。
(緑の巨人に旧蝙蝠男に鋼鉄爪のあんちゃん…キャストにアメコミ関係者が多いが、これは別の言い方をすればアメコミ映画が実力派を起用している事になる)
ジャーナリストとマスコミでは似てるようで正しくはまるで違う。
ジャーナリスト→記者、マスコミ→媒体。
でも、“何かを伝える”という意味ではそう変わりはない。
どうもマスコミは、“マスゴミ”なんてディスり言葉があるくらいイメージが悪い。
確かに、下らないゴシップを漁るばかり。
人の愚行を伝えるだけが仕事じゃない。
見習えとも言わない。
その誇り高き“伝える力”を間違えるな。忘れるな。
有力候補の一つだったが、受賞はサプライズと言われた。
大方の予想は「レヴェナント」、もしくは「マッドマックス」の受賞を望んだろうが、結果的に本作が作品賞を受賞して良かったと思う。
モラルや倫理のみならず
父親と観たのですが…
地道な作業が実を結ぶという教科書のような話
記者たちの地道な作業に呼応するように、物語も淡々と進む。 彼らを過大評価することも、取り立ててヒーローに仕立て上げていないことにも、好感が持て る。
スポットライトは、四人編成のチーム。 そもそも聖職者の性犯罪を追う事になったのは、新任局長から「別の枠で取り上げているコラムをこのままに終わらすのは惜しい」との意見があったからで、この人の鋭い着眼点による功績が大きい。
そして調べるにつれ、驚愕の事実が明るみになる。教会がもみ消した聖職者の性犯罪率が、予想を遥かに超えて多かったのだ。 聖職者自体の数が、一地域に対して多いことが数字を押し上げているのこともあると思う。
その数字に辿り着くまでの地道な地道な作業。教会関係者の名簿に休暇や移動が含まれていたら、それは犯罪を犯した合図と推測し、頁を繰りつつ拾っていく。
それが長年聖職者の犯罪を心理学的要素から追ってきた研究者のデータと見事一致。そんな物的証拠とも言えない手がかりを頼りに、孤軍奮闘している弁護士や、被害者の会の助けを得て、被害者への取材にこぎつき数年がかりで調べあげていく。
聖職者による未成年への性犯罪は、彼らに宗教や地域や親への不信を植え付け、大人になってからも誰にも言えない恥辱と、永遠に消えない怒りで悩ます。元からゲイを自覚している少年であっても、それは変わらな い。
新聞記者から教会への糾弾は、地域の名誉を傷つけ、地域のつながりを断つことにもなるため、もみ消しに関わった弁護士や教会関係者から圧力を受ける。
命を狙われるとか、派手でドラマティックなことは起きない。 だが、文字通り生活や人生をかけて、罵詈雑言や拒絶に立ち向かう彼らの姿は、静かに静かに胸を打つ。 信念をかけられる仕事に出会える人はどれだけいるだろう。
取材対象者の家の裏に、さりげなく教会が建っているショットがある。
いかに教会が地域に密着しているかがよくわかる。
新任局長はユダヤ人で、 彼は第三者の目で、カトリック教会の闇に気 がついた。そういった人種多様なアメリカの複雑な社会構造も言葉の端々にあらわれ、勉強になる。
後半、数年前に被害者の会からボストングローブに送られた資料が局内で雲散霧消していたことが発覚。故意ではないとはいえ、それは着任間もなかった現スポットライト編集長の責任によるところだったと判明。 皆が言葉を失うなか、彼にかける局長の言葉が印象的だった。
「私たちは暗闇のなかを歩いていて、正しい道はわからない。ある日突然に光が指して自分の歩く道がわかる」と。
これはどんな仕事にもいえる。例えば原発などもそうだけど、事故が起こってからとんでもない過ちをおかしたことに気がつく。
それは電力会社、科学者、利権を受け入れた原発村、安全神話を鵜呑みにした社会、なにも考えず惰性で生活してきたすべての人間に当てはまる。
常に考え疑問を投じ、自分で調べること。それがいかに大事かを改めて教えてくれた、教科書のような話だった。
冒頭から集中して観るべき
マネー・ショートの時もそうでしたが、
この手の実話の映画化は思うことがありすぎて内容が上手くまとまらない。
まとめきれない。
事件が報道されたのは2002年の年明け。
911の翌年。14年前の自分は何を考えてだろう。
映画を観て衝撃を受けるということは、
当時の報道されたこのニュースを知らなかったという証明にもなります。
思い返してみると、あの頃ちょっと記事で見かけただけで、
興味ないからと大して内容を追いかけていなかった自分としては、
色々と考えさせられることがあります。
それぐらいエグい事件でしたし、そう思えるように描かれていました。
映画化されることで更に広く知れ渡ることにもなりますが、
これだけの事件が娯楽に繋がらなければ思い返すこともない。
如何ともし難いですね。
小難しい部分もあるので、
思考が追いつかないこともありましたが、
時間が制限される中でも非常に巧みに構成されていて、
後半になるにつれ食い入ると思います。
ただこの後まだ観てない人に薦めることがあれば自分がこう言います。
事件は既に始まっている。冒頭から集中して観るように、と。
たまたまラッキーだっただけ
劇中にあるこの言葉の意味の重いこと。
宗教とはなんのためにあるんだろう?
マスコミはどんな役割をしてるのだろう?
スクープを追うことで、大きな問題を世間に知らせるけど、その過程にある悲劇は些細なことになってしまうのか?
役割があったとしても個人的には辛いことで、葛藤があったと思うし見てとれる。
よかった。
性的描写は一切なし
流石の作品賞
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