「上手いから歌うのではない、好きだから歌うんだ」偉大なるマルグリット REXさんの映画レビュー(感想・評価)
上手いから歌うのではない、好きだから歌うんだ
クリックして本文を読む
夫の疑問、「なぜ彼女は歌うんだ?」のシンプルな答え。
上手いから歌うのではなく、好きだから歌うんですよね。
ありのままをさらけ出す天真爛漫で純粋なマルグリット。
好きなものは好き!と歌う喜びに溢れた彼女の目の輝きを前にしたら、好きにならずにいられなくなる。
一度は騙された若き芸術家たちへの寛容な振るまいも素敵。自分が好きな人や物に惜しみ無く投資する姿も清々しい。
自分が一番大事にしているものを、なぜ夫は認めてくれないのか。
自身の音痴に気づかない彼女はずっと心を痛めている。毎度歌う前に夫を探す姿が切ない。
終盤、劇場でリサイタルを敢行したマルグリット。
序盤では音痴を盛大に披露し失笑を買うが、特訓の成果もあってか徐々に音程があってくる。…まさか?もしや?
期待に胸を膨らませたところで、まさかの展開。
すっきりとハッピーエンドにせず、髭女の台詞「物事には光と影」のように、悲劇と幸福の二重構造で畳み掛ける。
マルグリットの軽い精神崩壊とともに、それまでの世界が暗転。
黒人執事はずっと味方とばかり思っていたのに、彼女を面白い被写体として利用していただけだった。
しかしマルグリットが切に望んでいたもの、夫の献身や情愛は彼女を包み込んだ。真実を受けとめて、もう一度彼女が目覚めることを切に願うばかり。
ともあれマルグリットからは、評判や周囲の声にとらわれない、心の自由と解放のあるべき姿を教えられた気がしました。
コメントする