「自称『かなり暗い青年期』監督」月光 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
自称『かなり暗い青年期』監督
『K's cinema』での公開からもう十ヶ月・・・ もう観れないなぁと思っていたところに高崎映画祭にて上映が掛かり、大変ラッキーだった。寸評や宣伝文等で、かなり危ない表現内容ということで『攻めている映画』好きな自分とすれば、数少ないこの手の作品を見逃すのは辛い。
ヒリヒリ感で顔が歪む。ずっと鑑賞していて顔が綻ぶことは一切無い。ずっと擦過傷の場所をいじられているような感覚だ。演出も期待通りのカットである。監督の優しい部分が現われているとすれば、事が起こった実際のシーンは回想として後回しにして、初めは巧くストーリーを進めている点だ。だから、突然驚くようなことはならない。だが、やはり逃げずにしっかりと鬼畜なシーンをストレートに演出しているので、作品を観ていて納得と、作り手の覚悟を強く感じ取れる。それは子役であっても然り。多分今まで観た映画の中でこれだけ生々しくそして胸を締め付けられるシーンの連続は無いだろうと回想する。フラッシュバックの演出方法も凝っていないだけ、素直に観れることができ、被害に遭った主人公や子役の居たたまれなさは、観客をガンガン陥れていく。
鑑賞後の監督挨拶も又非常に興味深く、表現の自由への飽くなき追求は、最終的に『パルムドール』までの道として決して捨てないで欲しいと願うばかりである。『金色のシェロ』を奪取するその日まで応援を止めないでいこう。
挨拶語に、個人的に話をさせて頂き、加害者役の心情が薄かった点を質問させて貰ったが、的を射た回答がなかったのは仕方がないと思った。被害者側のクローズアップを主眼としたテーマなのだから、あくまでも敵には重きを置かないのは当然だ。我ながら愚問であった。しかし、もし希望を言うならば、将来は是非、犯罪に手を染める人間達の心の闇を彫り下げるテーマをお願いしたいと勝手に思ったりしたり・・・