「国策映画であっても反戦映画」陸軍 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
国策映画であっても反戦映画
国策映画として作られた軍人一家の内容。西南戦争から、日清、日露、大東亜戦争に至る富国強兵の時代。軍人はお国のために死すことが本分だと忠君愛国の頑固一徹な持ち主の祖父。
「男の子は天子様からの預かりもの」。軍人になることでお返しすることができるとういう妻の弁。。高木は「神風が吹かんでも元に勝っていた」などと皇国日本を信じきっていた。川に飛びこむこともできなかった伸太郎が立派な上等兵となったが、戦地に行けなかった。やがて桜木のところで息子の出兵の報を受ける高木。思わず受話器を置いてしまうユーモラスな一面も見せるテクニック。
そして出陣式。涙が出るからと見送りに行かない母親田中絹代であったが、もう2度と会えないことを思うと居た堪れなくなって駆け出して往く。出征の行進を続ける軍隊の中に息子の姿を見つけ、みつめあう母息子。
何度も頷きあって別れを悲しむ母親のシーンは何とか軍の検閲をくぐり抜けるが、木下監督は軍に睨まれることとなった・・・立派な軍人に育てあげ天子様に子をお返しすると言っても、心の中では息子を死なせたくないという母親本来の気持ちを如実に表している。評価は平凡になるが、木下監督の強い思いを感じる作品だ。
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