「.」エイリアン コヴェナント 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。前作『プロメテウス('12)』より十年後となる2104年12月5日(『エイリアン('79)』は本作の18年後、2122年とされている)から始まる。前作同様、荘厳なロケーションと重厚なBGMは健在だが、ストーリーはより判り易くシンプルになっており、テンポも速い。このシリーズはアンドロイドが物語のスパイスとなっているが、本作ではより重要な役所を担っている。全体に消化不良で破綻気味だった前作の不満を解消するが如くの作りで、シリーズお馴染みのシーンやクリーチャー達もしっかり登場する。65/100点。
・本作で初めて登場する胞子状で動物に寄生するのと較べ、クイーンが産卵→卵→フェイスハガー→チェストバスター→ゼノモーフと変態を繰り返す方が遥かに非効率的であり、胞子からの改悪(もしくは改良失敗)についての意図した物や説明が一切省かれている。
・序盤に登場するクリーチャーは“ネオモーフ(Neomorph)”と呼ばれており、生白い不気味な外観は『サイレントヒル』シリーズ('06・'12)に出たクリーチャーを彷彿させるが、実際はミツクリザメ(ゴブリン・シャーク)からインスパイアされたと云う。亦、本作のゼノモーフの亜種は一部のファンの間で“プロトモーフ(Protomorph)”と呼ばれており、これはこれ迄のシリーズで展開されてきたゼノモーフの前駆体と云う意味に由来する。
・本作のスタートとして設定されている12月5日はW.ディズニーの誕生日であり、本名であるウォルター・イライアス・ディズニーのファーストネーム“ウォルター”はM.ファスベンダー演じるアンドロイドの命名の由来の一つにもなっている。
尚、シリーズに登場するアンドロイドのネーミングは、『エイリアン('79)』の“アッシュ(Ash)”、『エイリアン2('86)』・『エイリアン3('92)』の“ビショップ(Bishop)”、『エイリアン4('97)』の“コール(Call)”、『プロメテウス('12)』の“デヴィッド(David)”と意図してアルファベット順に配されており、本作の場合、本来は“E”で始まる筈なのだが、“デヴィッド”の合わせ鏡として先頭から四番目の“D”を末尾から逆順の四番目である“W”の頭文字を当てた。
亦、二体のアンドロイドには、嘗てからシリーズに(共同)製作、原案、脚本等で深く関ってきたデヴィッド・ガイラーとウォルター・ヒルのそれぞれのファーストネームも由来の一つになったと云われている。
・二体のアンドロイドの遣り取りには、BL的なニュアンスや所作が垣間見られるが、一方的に抹消しようとした際、口づけするのは同監督の『ブレードランナー('82)』でR.ハウアーの“ロイ・バティー”が、J.ターケルの“エルドン・タイレル”を殺す際、キスするシーンからの引用である。
・スタッフロールの初めに監督のアシスタントを長年務め、監督の製作会社“スコット・フリー”のマネージングディレクターでもあったJ.ペイン('16年6月15日に64歳で鬼籍入り)に献辞(In memory of Julie Payne)が捧げられている。
・そもそも本作は前作『プロメテウス('12)』で未解決だった謎や伏線を回収する為の物語として企画しており、ワーキングタイトルは『Alien: Paradise Lost』としていた。脚本家としてD.リンデロフが雇われたが、シリーズと懸け離れたプロットに加え、単作では解消・回収しきれないとされたので、意図的に未解決な謎を残すシナリオとなってしまった。D.リンデロフは他の契約を理由に降板し、J.パグレンがシリーズ寄りに新たな脚本を書いたが、降板。後をM.グリーンが引き継ぎ、更にリライトを重ね完成に漕ぎ着けた。
二転三転するシナリオに翻弄されかの如く、当初は前作のN,ラパスが“エリザベス・ショウ”役で続投すると発表されたが、実際にはクレジット無しの声と写真のみの出演に留まり、新たなヒロイン“ジャネット・ダニエルズ”もR.ファーガソンに決まっていたが、K.ウォーターストンに変更となった。同様に当初は、序盤で直ぐに殺されるチョイ役だった“テネシー・ファリス”のD.マクブライドも出番と役所が大幅に変わってしまった。
・企画・製作段階のゴタゴタとは裏腹に撮影は74日間で終了し、予算は1億1,100万ドルと予定通りに収まり、プリプロダクションもスムーズに進行したとは、監督の弁。
・前作『プロメテウス('12)』の成功を受け、シリーズの前日譚三部作の二作目に当たる本作だが、監督によると三部作の完結篇として最低でもあと一作は作るとしており、場合によっては、三部作の他にも数作続けるかもしれないと発言している。
・鑑賞日:2017年9月17日(日)