「若さゆえの過ち」機動戦士ガンダム THE ORIGIN III 暁の蜂起 たけろくさんの映画レビュー(感想・評価)
若さゆえの過ち
「歴史は一人の英雄によって紡がれるのか…」。思うに答は「否!」です。しかし、あるマクロな状況下でその状態を「決壊」させるトリガーが、一人の人間(時として「英雄」と称される)であることはあり得ます。そしてその英雄が「俺はいま歴史を動かしている!」という過剰な自意識を持ってしまうことがあることも、私たちは歴史から学んでいます。
一方、歴史というのは非情なもので、非力で非現実的な思想は、一時的な熱狂をもたらすことは出来ても、社会を現実に継続させていく力は持ち合わせていません。その意味からすれば、思想家が夢見た理想郷の多くは、時間の重みに耐えられず早晩瓦解します。でも人間は、そんな「夢」を繰り返し見ずにはいられないものなのでしょう。そしてその「夢の連鎖」から、真の「新しき世のフレーム・ワーク」が紡ぎ出されるのです。
本質的には棄民政策であったとされるコロニー計画によりマクロにもたらされた歪みが、ミクロな「揺らぎ」でどう決壊していくのか…。「1st」で語られてなかった前史が丁寧に、かつリアルに組み立てられていて、作り手の意気込みを感じます。特に今作では、ガルマ・ザビ、キャスバル・レム・ダイクンという二人の青年が、ともに大きな何かを背負いつつ、互いに個人として関わりを持っていたことが魅力的に描かれていたと思います。
ガルマにとってシャアは間違いなく「友人だった」と言えるでしょう。一方シャアにとってガルマは何だったのか…。
ここに来て、1stにおけるシャアのあのフレーズが思い出されました。いわく「君は良い友人であったが…君の父上がいけないのだよ!」
このフレーズには何らの粉飾もなかったことを、今回あらためて痛感しました。
続編が楽しみです。