劇場公開日 2016年3月5日

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「隠れた名作」ロブスター shosho5656さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5隠れた名作

2018年9月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

楽しい

興奮

ぶっ飛んだSFである。

まず結婚していないと動物にされるとは人権団体が黙っていない設定だ。

無論猶予があって45日間施設で暮らしながら、狩りと新しいパートナー探しに励む義務が課される。狩とは野良独身者を麻酔銃で捕まえることで、猶予が一人捕まえるごとに一日伸びる。もちろん新しいパートナーと出会い、生活がうまくいくことが保証されればこの施設とはおさらばだ。

主人公はロブスターになりたいらしい。100年以上生きるし、死ぬまでセックスできるからだと。前向きなのか後ろ向きなのかわからない。

この世界では鼻血を出しやすいとか共通点があるとくっ付くらしい。たったそれだけと思うが、そういう共通点を大事にする世界なのだ。
そのためにある人物は鼻血をわざと出して共通点のダシにしようとする。そこまでやるかと思ったが、それぐらいの価値があることなのだ。

他にも近視とか感情が無いだとか、何か一つでも共通点を見つけていくことでパートナーを見つけようとする。

この施設では異性へのアプローチ欲を高めさせるために女性が尻を男性の股間に擦り付けボッキさせる習慣がある。動物みたいだがシステマチックでディストピア感のある奇妙な習慣は、射精までは許さない。自慰も許されず、罰則に該当する。

物語の後半で自由を謳歌する野良独身者のグループに主人公は入る事になる。ここでは恋愛禁止でそういった事は非常に厳しい罰を持って制裁される。ダンスも一人だし、基本的に寝るときも一人である。両親もいるフランス人が何故かこの野良グループのリーダーで、狩られないようにグループを
訓練しつつ、鉄の掟を敷いて集団を統括している。

そんな場所に限って主人公はそのグループのある女性と恋に堕ちてしまう。
例によって近視という共通点が二人を近づける。

二人が懇ろになっていることがリーダーにバレてしまい、女性の方が近視を治す手術だとリーダーに騙され失明させられてしまう。

失意に暮れる女性だが男性は女性をそれでも支えようとする。

ただ、それでもやりきれない気分が二人を襲う。そんな中決意したように

男はリーダーを殺して街へ逃げることを提案する。その提案に乗っかり、

二人は計画を実行する。ひと段落して街のファミレスの中

男性は女性を穴のあくほど見つめる。横顔手足、笑顔。そして静かに

ウェイターを呼び、ナイフを貰う。自身も女性と同じ立場になろうというのだ。洗面所にナイフを持ち一人佇む。震えながら鏡の中の自分を見つめる。

彼が最終的にどうしたか描かれないまま映画は終わる。

彼も暗闇を失い、代わりに伴侶を得たのか。

それとも、やはりタイトルが示唆するように光の差さぬ水底でロブスターになったのか。

shosho5656