「奇跡も、魔法も、ないんだよ」マジカル・ガール 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡も、魔法も、ないんだよ
もっと日本アニメにオマージュたっぷりの話かと思ったが、開幕シーンで長山洋子の楽曲が使用されたりしているものの、あくまできっかけに過ぎず。
ドミノ的にどんどんどんどん悪い方向へ。不条理で予測不能、ブラックユーモアを絡めた作風や展開は独創的。
日本のアニメ『魔法少女ユキコ』の大ファンの12歳の少女、アリシア。
白血病で、余命が少ない事も感づいている。
願い事が。有名デザイナーが手掛けた『魔法少女ユキコ』のコスプレをしたい。
父ルイスはそれを知り、娘の願いを叶えてやりたいが、コスチュームは一点もので非常に高価。尚且つルイスは今無職。本を売るなどしても到底足りない。
アリシアの一番の願い。父親とただ一緒にいるだけでいい。ラジオにその思いを投稿するも、金策に走るルイスは知る由も無く…。
宝石店のショーウィンドウを壊そうとした時、上から突然のゲロゲロゲロ…。
その建物の上の部屋に住む女性バルバラ。
詫びを込めてルイスを部屋へ。着替えや洗濯。
何処か精神不安定なバルバラ。精神科医の夫との生活に疲れ果てていた。
孤独や事情を抱える二人。合意の上で関係を。
ルイスはこれを脅迫のネタに、金をゆする。
支払わざるを得ないバルバラ。
一度だけではなく、二度も。金に困ったバルバラは旧友のツテで危険な仕事を…。
バルバラは身心共にダメージを負ってしまう…。
刑務所帰りの元教師ダミアン。
ある時、倒れていたバルバラを助ける。
バルバラはダミアンの教え子で、ダミアンはバルバラに想いを…。
事情を聞く。
ダミアンは偶然を装ってルイスに接近。問い詰める。
バルバラから強/姦されたと聞かされていたが、合意の上という事が分かるも、尚更ショックを受け、ルイスを殺害。
ルイスの家へ。コスプレしたアリシアと鉢合わせ。
無言で凝視するアリシアに堪えきれず、アリシアも殺害。
バルバラを苦しめる存在は居なくなったが…、
バルバラやダミアンにとってはハッピーエンド…? ルイスやアリシアにとってはバッドエンド…?
娘の為とは言え、愚かな行為をしてしまったルイスは許し難い。が、殺されてしまったのは気の毒な気も…。
自分の知らぬ所で、周りが不幸に。娘の本心を父親が気付いてさえいれば…。悲劇の中心に居て、巻き添えを食らったかのように殺されてしまったアリシアは余りにも酷い。
脅迫されたのは事実だが、彼女もまた周囲の男たちを惑わし、決して同情出来ないバルバラ。彼女だって元凶の一つ。
彼女の為に、罪に罪を重ねてしまったダミアンもまた然り。
揃いも揃って愚かで罪深い。
他に道は無かったのか…?
救いの無い。
本作の脚本を執筆中、『魔法少女まどか☆マギカ』にハマっていたというカルロス・ベルムト監督。
この救いの無い物語、何か通じる…。
実はしっかりと、影響やオマージュはあった。