「復讐するは我と同じにあり」悪のクロニクル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
復讐するは我と同じにあり
日本未公開ながら、これまた面白い韓国サスペンス!
チェは表彰もされ、部下から尊敬も人望も厚いベテラン刑事。
家族との関係も良好、次の出世も確実。全てが順風満帆だった。
そんなある夜…
部下との飲み会の帰り、タクシーに乗る。突然、運転手に襲撃される。
後で分かった事だが、この運転手はチェに恨みを持つ者。
殺意剥き出し。
正当防衛とは言え、チェは運転手を殺してしまう…。
順風満帆の刑事人生に突然襲い掛かってきた最悪な出来事。
さらに最悪なタイミングで掛かってきた署長からの出世約束の電話。
この時、正直に言えば良かったのか。
しかし、チェも一人の人間で、欲があった。
指紋などを拭き取り、死体も処分し、隠滅した…筈だった。
翌朝、チェは我が目を疑う。
例の死体が、警察署の前のビルの屋上からクレーンで吊るされて発見され…。
身の保身に固執する余り、いつもより精彩に欠けるチェ。
それを不審に思うチェを尊敬する若手刑事のドンジェ。やがて物的証拠などを見付け、確信に至るが、思い悩む…。
チェの醜態と迷奔走だけかと思いきや、予想もしない展開へ。
まず、一体誰が死体をあんな状態に…?
署長は怒り心頭。絶対にホシを挙げろと言うが、そのホシは自分。居もしないホシをどうやって…?
それでも挙げなければいけないプレッシャーと上からのプレッシャーの板挟み。
しかしそれでも捜査を続けていくと見えてくる、背後にある裏組織。
さらに、自分と先輩刑事と署長が過去に関与した事件。
まるで、何者かに操られたかのように。
そうなのだ。
一人の男が自首してくる。
が、この男は“役者”に過ぎない。
全てを“演出”していた黒幕は別に居た。しかも、チェのすぐ身近に。
ここで、「?」と思った開幕シーンとリンク。
主人公の刑事の転落劇であると同時に、ある人物の無慈悲な復讐劇でもあったのだ。
キャストではチェ役のソン・ヒョンジュの焦燥と静かなる熱演もさることながら、後々キーパーソンになるドンジェ役のパク・ソジュンに注目。
何気なく見てたら、チェに忠実な部下役でマ・ドンソクがいい役回りで出ていて、得した気分!
復讐相手を昔の自分と同じ立場に。
あなたならどうするか…?
これ以上の復讐は無い。
そこまでの物語や展開の運びも見事で、飽きずに引き込まれた。
韓国では大ヒットしたらしいが、これぞ掘り出し物。2015年の作品。
未公開作に負けちゃってるよ、日本映画。オイオイ…。