「西洋風の横溝ミステリー」クリムゾン・ピーク bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
西洋風の横溝ミステリー
ミステリーを描かせたら、独特なダークな世界観で魅了する、鬼才ギレルモ・デル・トロが手掛けたゴシック・ホラー。時は、1900年代初頭。近代産業の発展が目覚ましいニューヨークから、イングランドの北の大地に佇む、ホーンテッド・マンションのような古城が舞台。
古城の内装や家具、絵画、調度品は、ゴシック芸術とも思えるほどの美しさと共に、ミステリアスなダークな雰囲気を醸し出している。そして、この古城の土地が、赤い粘土質の土地の上に建ち、そこに降る雪との紅白のコントラストは、『デル・トロ美』とも言える不気味さや恐怖を煽る演出とも言える。
内容の落としどころは、醜悪な近親相関、血に彩られた血縁関係等、横溝正史ミステリーではお馴染みのドロドロしたお家騒動。西洋版の横溝ミステリーといった印象が残る作品。また、地下にある真っ赤な粘土が収められている樽は、『悪魔の手毬唄』のワイン樽で殺されるシーンの舞台と大変よく似ていた。
幼い時に母を亡くしたイ―ディスは、それ以降、母の幽霊を見るようになる。そして、イ―ディスがレディーへと成長すると、資産家の父までも謎の死を遂げる。父の元を訪れていた発明家のトーマスは、傷心の彼女の心の隙に潜り込んで結婚し、姉のルシールが住むイングランドの古城へと連れ帰る。しかし、この結婚は、イ―ディスを貶める為の、トーマスとルシールによる、血塗られた策略でもあった。
そして、その夜から再びイ―ディスの前に悍ましい姿をした幽霊が、「クリムゾン・ピークに気をつけろ」の言葉と共に現れる。その「クリムゾン・ピーク」こそが、この古城のことだとイ―ディスが気づいた時には、トーマスとルシールの魔の手が忍びこんできていた。
出演者は、なかなか注目すべき俳優が揃っている。イ―ディスには、『アリス・イン・ワンダーランド』で少女のアリスを演じたミア・ワシコウスカが演じ、随分成長した姿を見せていた。イ―ディスの夫となったトーマスには、『マイティー・ソー』でソーの弟のロキで、ハリウッド進出を果たしたトム・ヒドルストン。そして、『オデッセイ』や『スノー・ホワイト』等、多くの作品にも出演している実力者女優・ジェシカ・チャスティンが、謎めいたトーマスの姉・ルシールを演じている。