「耽美的で血塗れ、それでいて途方もなく透明度の高いゴシックホラー」クリムゾン・ピーク よねさんの映画レビュー(感想・評価)
耽美的で血塗れ、それでいて途方もなく透明度の高いゴシックホラー
母を亡くした少女イーディスは深夜の寝室で母の霊から”クリムゾン・ピークに気をつけなさい”という謎の警告を授かる。十数年後、父の事業を手伝いながら幽霊をテーマにした小説を書いていた彼女の前にロンドンから来たという謎の紳士トーマスが現れる。すぐに惹かれあった二人はトーマスを好ましく思っていなかった父の死を機に結婚してロンドンに渡るが、人里離れた古屋敷での共同生活はトーマスの姉ルシールと屋敷に潜む得体の知れぬ妖気によってたちまち悪夢に変貌する。
近代英国を舞台にしたゴシックホラーという触れ込みを遥かに凌駕した世界観が圧倒的な、無数の蛾が飛び交い魑魅魍魎が這いずり回る英国版『八つ墓村』。異形の者への偏愛を惜しげもなく作品に滲ませる監督ギレルモ・デル・トロの一貫した作家性が画面の隅々まで行き渡っていて、ダークファンタジーの傑作『パンズ・ラビリンス』と並ぶ耽美的で血塗れ、それでいて途方もなく透明度の高い物語はいつまでも余韻を味わっていたくなる美しさに充ちています。
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