劇場公開日 2016年9月17日

「粉々に砕いた“心”と“繋がり”、それを掻き集める“強さ”・・・京アニでなきゃ描けなかった真っすぐなラブストーリー」映画 聲の形 平田 一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5粉々に砕いた“心”と“繋がり”、それを掻き集める“強さ”・・・京アニでなきゃ描けなかった真っすぐなラブストーリー

2016年9月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

小さくて細い糸が不意にプツンと切れた感覚。体験談の話ですけど、それが”繋がり”の切れた感覚です。それはほんの数秒で身体の内側を凍り付かせて、本気で自分の中の一部が欠落したと錯覚します。しかもそれは時間を経ても、忘れることを許しません。未だ身体は覚えてますし、死ぬまで消えぬと思います。

体験談を使ってまで、何故レビューを書き始めたか?それが『映画 聲の形』を鑑賞中に甦ったからです。最も忘れたい忌まわしい”落ち度”、でも忘れてはいけない”事実”を。それがそのまま将也君や硝子ちゃんにも通じるからです。

罪のない好奇心がボタンの掛け違えで凶器になる。やり過ごす為の愛想笑いが逆に相手を逆なでする。防げなかったすれ違いで築いたものはあっさり壊れて、それが幾年経過しても心に影を残してしまう。幼少期の出来事って、例え克明に覚えてなくても、身体と心は覚え続けて、忘れさせてくれないので、当事者はただひたすら苦しいんですよね…。『聲の形』はその苦しみを容赦なく描いてます。しかもひたすら苦しい場面の羅列で画面を覆うのでなく、合間に希望を混ぜることで、それをさらに鋭くします。

過去に『たまこラブストーリー』や『境界の彼方』の”過去”と”未来”で苦しみの先に待つドラマを描いた京アニ作品なだけに、本作もそのブランドに恥じない映画になってました。”偽善”からの行動だと心のどこかで分かっていても、それでも犯した過ちからは逃げたくないと向き合う将也君。自分自身を嫌み嫌って、命を絶とうとした硝子ちゃん。皆苦しい現実から何度だって逃げ出したいのに、逃げたらもう戻れないと分かっているからこそ故に、傷つけあって責め合って、繋がりたいと必死に足掻く。ポール・ハギスの『クラッシュ』ばりにほんとボロボロになってくんです。正直無視できないほど、心と胸が痛みました。

でも映画はそこから抜け出す、光の道を用意してます。それがまた抉られるほどの痛みを受けねばならないもので、そのせいで硝子ちゃんは将也君を傷つけます。下手をすれば彼の命を奪いかねないほどの事態を。被害者だけであった彼女はここで初めて加害者(的立ち位置)となり、将也君のことが好きな直花ちゃんを傷つけます。確かに自ら命を絶てば、楽にはなれるのかもしれませんが、もう将也君のことが好きと自覚した以上、彼の目の前で死ぬことなんてできるわけがありませんよ。人は人を好きになったら、二度ない命を捨てれませんし(全員が全員そうじゃないので、あくまで僕の想像ですが)。

ほんとはもっと巧い言葉でレビューを語りたいのですが、文章力が拙い上、知恵もないし、語彙もないので、”鉄は熱いうちに打て”に従い本能で書きました。ですがこれだけは言えます。

この映画にこうして出会えて、ほんとうに良かったです。ありがとうございました(レビューを読んだユーザーの方も)!!

平田 一