「ストーリーに重みがない」溺れるナイフ 中山さんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリーに重みがない
原作のファンで配役が良く、期待していた映画なだけにがっかりしました。
撮影期間17日間という短い期間だったからなのか、ストーリーも台詞も演出も薄すぎる。
お金を払って映画館で見て怒りさえ覚えました。
まず第一にストーリー展開が早すぎます。
映画始まって五分で主人公とコウちゃんはお互いを特別視。(なぜ?)
写真集の撮影中コウちゃん「そいつはオレのもの」発言。(早すぎないか?)
主人公「写真集できた」(早すぎない!?)
コウちゃんと主人公が言い争うシーンは心情表現が不十分で、あれだと「なんでコウちゃんいきなり別れたがってるの?」と思ってしまう。
コウちゃんと夏芽が付き合ってた期間のシーンは「空ー!海ー!」と叫んでいるだけで、映画後半「そんなにコウちゃん大切だったの?」と疑ってしまう。
などなど……。
だらだらと書きましたが、つまりストーリー展開が早すぎるんです。
一つ一つのシーンがさくさく進みすぎて(特に前半)、かと思えば後半は主に大友関連のシーンで「そんなにそこ尺いる?」と思うシーンがあったり…。(カラオケのシーンなど)
そのせいで、登場人物たちの想いが軽く感じてしまうし、曖昧な台詞回しや表現にしすぎているせいで「えっ何が起こったの?」と思う方もいると思います。
もっと丁寧にストーリーを進めて欲しかったです。
また、所々雑だなあ…。と思う所も多々ありました。
主人公が転入してくるシーンでモブ生徒ワンテンポ遅く「プラムノナツメチャンジャ!(棒読み)」
有名なカメラマンのカメラが「本当にそのカメラでいいのか…?」と不安になる程おもちゃのようなカメラ。
挿入歌の「このタイミングでこのテンションの曲入れる?」感。
最後の司会者の棒読み、周りの観客エキストラ感。などなど…。
あと大友がたまに台詞噛むんですけど、噛んで「リアルだなあ」と感じるなら良いのですが、普通に「あっ台詞噛んだ」と思ったので、あの演出は完全に蛇足だと感じました。不必要に噛んだままのシーン流さなくていいと思います。
とにかく一言で、雑な映画です。
厳密にいうと、「監督が好きな(好きであろう)シーン以外は雑」です。
本当にそれがよく分かります。
「あ〜この監督こういうの好きなんだろうなぁ。」って。
少なからず映画作品はその監督の趣味が現れるものですが、これでは少し自己満映画過ぎるのでは?
映画を観てて、力の入れているシーン以外は「はいこのシーン入れましたよ。次のシーン行っても良いですよね?」という感じだと思いました。
一つの映画にするのが精一杯だったのでしょうか。
自分が興味がないシーンでも丁寧に作って欲しいな、と感じました。
少女漫画の中身のない実写化が多く、最近のこの流れにうんざりしていた中、溺れるナイフにだけは少し期待していたのですが、本当に残念です。
やはり何巻もある漫画全部を2時間に詰めて、かつ良い映画にしようというのは無理があるんだなと実感しました。
日本では一種の「漫画実写化ブーム」が起きていますが、私はやはり「ちゃんとした映画」を観たいと思いました。
このような映画作品が注目されるようでは、邦画の将来が心配です。