「テーマが拡散している」アバウト・レイ 16歳の決断 kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
テーマが拡散している
エルファニちゃん演じるレイが16歳のトランスジェンダー、祖母は同性のパートナー有りと、LGBT映画かと思いきや、そうではなかったです。
両親の承諾がないとホルモン療法を受けられないため、両親のサインを取りつける話であり、価値観とかの話ではなかった。はっきり言ってレイの話ではなく母親マギーの話で、しかも過去の三角関係とか、わざわざ本作で取り上げる必要性を感じないテーマに焦点が当てられていました。
元題は3 generations. 祖母はレイ(ラモーナ)が男になることは反対であり、自身の固い価値観に囚われている様子。国連で働いている(?)パートナーは祖母よりはリベラルっぽい。その間にいる母親を巡る、価値観のぶつかり合いのドラマかと思いきや、そうでもない。祖母の保守的な価値観のルーツ(ちらっと出てきたけどフェミニズムかな)とかは深く語られることもない。なので世代間の衝突も深まらず。邦題だけでなく元題までも間違っているというダメっぷりです。
個人的には大失敗作と思っていますが、原因はいろいろと美味しそうなテーマを散りばめておきながら焦点を絞れず拡散しているためだと思います。そうなると語り口が雑になり、物語に説得力が生まれない。こんなに掘り甲斐のあるテーマが散在してるのに、内容が薄っすい!
エルファニちゃん演じるレイは素晴らしかったです。熱演だったと思います。正直、凄味さえ感じました。自分の力でサインを勝ち取るよう動いたところは胸に迫ります。16歳だと未成年だからバカな親に縛られて身動き取れないのは苦しいよね。
が、ケンカで殴られた後に、思いを寄せるコから、「(ケンカ相手が)女を殴るなんてひどい!」と哀れまれたシーンが最も印象に残りました。こんな痛みのあるシーンを撮っておきながら深めないなんて怠慢としか思えません。
本当に雑な映画でした。なんか誠実じゃない!
わざわざLGBTの家族にしたのに?レイの恋を描いたのに?でもメインで描かれているのが幼稚な精神年齢の母親がおりなすドタバタとはあんまりですよ。一見、子どものことを受け入れ難い母親の葛藤の話のように見えて三角関係だもんな、ひたすら雑。伯父とかなんなの?その話すらきっちり描けてない。
最後もなんかいい雰囲気で終わっておりましたが、マヌケだなぁ〜と思いました。店もなんか和民みたいな雰囲気だったし。
性別違和の苦悩をつまんねぇ昔の色恋のツマにしているという意味でも感じが悪いですね。こんなクソ脚本だから、落ち着いたBGMも逆にムードでだまくらかそうとしているように見えてしまう。
本作は早くも今年ワースト映画最有力候補です。星1.5はエルファニちゃんの演技のみにつけています。