劇場公開日 2017年4月15日

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「笑えるけど笑っていい状況ではない」人生タクシー つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 笑えるけど笑っていい状況ではない

2025年11月28日
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鑑賞方法:VOD

イラン系の観るべき映画監督は結構いて、イラン国内で映画製作をしていなくともイランを舞台にした作品を作っていたりする。
それらを観ているとイランの抱える社会問題やシステムを自然と理解していくことになる。誰もがそれらを扱った作品を作っているからだ。
それだけイラン社会に、先進国目線で問題があると言うことだろう。
まあ、映画製作を禁じられた人や、亡命せずにはいられなかった人がいるくらいだから、少なくとも表現の自由は存在しないと見ていい。本作の監督であるジャファル・パナヒも映画製作を禁止された人だ。
なのでパナヒ監督は、本作を映画ではない体でゲリラ撮影したらしい。なかなか無茶をする。

話を戻すと、イランの問題を少し分かっていると、この作品の中で行われる様々な会話が非常に興味深い議論になっているのが分かる。
二つある法律、政治対立、これらは矛盾を生み出す。ズルく抜け道を探そうとするイランの国民性にも問題があるのかもしれない。
そして、そんなふうになってしまったのには元々のシステムに問題があるのではないかと、根本的な問題に戻ってくる。
抜け出せない負のループに陥っているようにみえるのだ。

よく海外では、日本の犯罪が少ないのは刑罰が厳しいからだと言っていたりする。
だけど自分の感覚では、この悪事を働いたら刑罰はどれくらいとか、そもそも知らないし興味もない。
つまり、刑罰が厳しいから、法律で禁じられているから罪を犯さないのではない。もっと単純に悪いことだからやらないのだ。
逆に言えば海外では、法で禁じられていなければあらゆる罪を犯すということになる。
この感覚の違いがイランの法律をグチャグチャにするのだ。
見せしめなどという発想が生まれてしまうのもこの感覚の違いのせいだろう。

文化も宗教も違う国に対して自分たちの基準で、こうすればいいと言うことは簡単だが、実際はそんなに簡単ではないと感じ取れてしまうだけでもこの作品は素晴らしい。そして何より映画として面白いのだ。

つとみ