「何度見ても冒頭から釘付け」無限の住人 youkoさんの映画レビュー(感想・評価)
何度見ても冒頭から釘付け
公開初日の昼の回を観ました。
万次と凛の関係性を軸に、生々しい殺陣の素晴らしさ。でもあまりの血生臭さに最後立ち上がれず…。夜になってもう一度見たくなり、レイトショーでおかわりしました。こんな事初めてです。以後複数回鑑賞しましたが飽きません。
まず冒頭のシーンで釘付けに。タイトルでようやく一息吐くのは何度見ても同じです。
そこからの2時間はだれた長さを全く感じず。激しい殺陣はもちろん、静謐なシーンの溜めもたっぷりと堪能できます。長編漫画実写化という私の構えを軽く超え、一本の映画として非常に満足度の高い作品となりました。ワンシーンごとの構図を活かしたカメラワークにも毎回見惚れます。
ただ、原作よりはかなり抑えられているとはいえ、斬られた腕がボトボト落ちたり、殺し合いのエグい表現も多いので、PG12か下手したらR指定でも妥当だと思います。でも劇場内では、時代劇を見慣れている様子のお年寄りは流石というか全く平気なようで、そういうものか…と思いました。
より多勢を相手に闘うクライマックスは『十三人の刺客』を思い出しました。今作は武器等の世界観が違うせいもあり、より緩急がはっきりして飽きさせない。
どの闘いでもそうですが、万次の意思の矛先が変化してゆく様子が独眼や全身から伝わってきて、本当に一時も目が離せません。結果血みどろになってゆくわけですが…
万次役の木村拓哉さんはもちろんですが、凛を演じた杉咲花さんがとても良かった。気弱になる所、負けん気出して睨む目、万次を慕う様子…。叫ぶシーンも多いけど、ただの喚きではなく「少女の声量の上限一杯」といった感じ。
仇役の福士蒼汰さんは、風貌といい上背といい、あと声ですね…少し軽いかな?と思っていたらとんでもない。よく響く不思議な声で、若き指導者を違和感なく演じられたと思います。
木村拓哉さんは、冒頭の憑かれたような凄まじさといい、泥臭い殺陣が本当に圧巻。自分はあまり防御しない痛みが生々しい。そして万次のふとした所作や声がとてもハマっていて、穏やかな日常のシーンももう少し見たいと思ってしまいました…尺が足りませんね。
他の役者さんも皆さん達者で素晴らしい。吐を演じた田中泯さんは、演技でもストーリー上も全体を引き締めていたと思います。(市原隼人さんも!語り足りない…)
「ひたすら惨殺を楽しむ映画」という感想を他所で見かけましたが、視点は様々。暴力的な部分と人間模様とのバランスは、回を重ねて見ると絶妙だと感じました。
高得点になったのは、自分的な釘付け度合いです。
BGMも良かったけど、最後のMIYAVI氏による主題歌で腹の底から「ああ今回も満足した…!」と思えます。本当にエンドロールが終わるまでが一つの作品ですね。