「無限の杉咲花(の魅力)」無限の住人 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
無限の杉咲花(の魅力)
三池崇史と木村拓哉の初タッグで名作コミックを映画化した話題作なのだが…、
多分この映画はどう見るかで評価が分かれると思う。
まず、本作に限った事ではないが原作ファンならダメだろう。キムタクのキャスティングが発表された時からブーイングの嵐。それに、原作コミックは20年続いたらしく、例えその中の一エピソードであっても140分に納めるなんて到底無理。
いつもながら原作は未読。一本の映画として鑑賞。
巷では専らキムタクの勝負作なんて言われてるが、自分は三池崇史の新作として鑑賞。
昨年は稀に見る駄作を手掛け、本当に当たり外れの差が激しいが、ここ最近の中ではマシだったと思う。
三池とコミックの相性は作品によりけりだが、三池と時代劇の相性はいいと思っている。「十三人の刺客」は快作だったし、賛否分かれる「一命」も嫌いじゃない。
本作でも、要所要所のアクション、クライマックスの大立ち回り。
多量の血、切り飛ぶ手足、思ってた以上のバイオレンス。
ケレン味たっぷりの三池節。
白黒の冒頭は往年の時代劇映画を彷彿させた。
…でも、マシなだけであって、面白かったとはまた別。
まず、原作を知らないので本格時代劇を期待したら、あらびっくり!
不死の主人公、出るわ出るわ奇抜キテレツなキャラたち。原作がコミックとは言え、異様な漫画時代劇。
妹を殺され、謎の老婆に不死の身体にされた侍、万次。
両親を殺され、復讐を誓う少女、凜。
万次は凜から仇討ちの手伝いを依頼されるが、凜は万次の亡き妹に瓜二つで…。
万次と凜の擬似兄妹のような交流、凜の復讐の相手である剣客集団の魔の手。
題材や設定はいいのに、それらを活かしきれず。話だけ追うと単調で、ただ襲いかかる刺客と戦うだけ。
物語の面白味や展開のメリハリに欠けた。
ボリュームのある要素をまとめ整理出来ず、最後は支離滅裂で誰が敵で味方か分からなくなった。
突然飛び飛びになったり、唐突な展開や不可解なシーンは如何ともし難い。
また、不死の苦しみや、万次や凜以外のキャラも一人一人深みはあるようだが、それらもしっかり描いているとは言い難い。
そこら辺、昨年手掛けた駄作と何も変わってない。
140分がやたらと長く感じた。
特異な主人公を演じても、キムタクはやっぱりキムタク。抑制の無い喋り方、現代的な台詞回しもやっぱりキムタク。でも、それがキムタク。
が、百人斬りと言われながら刺客には結構ヤられ、強いのは不死だからであって、凄みや魅力を感じられず。
福士蒼汰、市原隼人、市川海老蔵、太ももが眩しい戸田恵梨香ら主役級がズラリ。加えて、山崎努、田中みん、福本清三らベテラン勢。
豪華キャストの中でも一際熱演と魅力を放っていたのは、言うまでもなく杉咲花。
実質彼女が主役であり、少女の弱さ、脆さ、健気さ、純真さを体現。
潤んだ大きな瞳とあどけない表情には引き込まれた。
にしても、本作での彼女は特別可愛らしかった。この娘、おでこ出してるより前髪下ろした方が可愛いね。
結局、三池でもキムタクでも「無限の住人」という作品でもない、杉咲花で見ちゃった(^^;