「メナハム・ゴーラン監督の手堅い実録もの」サンダーボルト救出作戦 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
メナハム・ゴーラン監督の手堅い実録もの
1976年に起こったアラブゲリラによる多数のユダヤ人乗客を乗せた飛行機のハイジャック事件の実録映画で、イスラエル製作、メナハム・ゴーラン監督。
1976年6月、ギリシア・アテネ発、フランス・パリ行のエールフランス航空機が、テロリストによりハイジャックされた。
テロリストは、パレスチナ解放人民戦線と西ドイツのテログループの混成。
ハイジャックされた航空機には100名を超えるユダヤ人が搭乗していた。
テログループはハイジャック機を反イスラエル国家のウガンダ・エンテベ国際空港に向わせて着陸させた後、ユダヤ人以外の乗客を解放し、多数のユダヤ人人質を楯にとって囚われている仲間の解放を要求した・・・というハナシ。
今回上映されたフィルムの状態がかなり悪く、雨ザーザーの状態。
オープニングタイトルもエンドクレジットも欠けているが、実録映画の面白さは満喫できた。
この手の映画だと、前半に乗客の人生模様を長々クドクドと描いて冗長になるのが常なのだけれど、乗客たちが乗り込むまでの冒頭5分程度で処理しており、すこぶるスピーディ。
ユダヤ人旅行客の中に、ドイツ人テロリスト(クラウス・キンスキー、シビル・ダニング)が不穏な動きをしているのがカットバックされて、緊張感を増している。
また、ハイジャックが発生してからも、イスラエルの軍部や政府の動きもハットバック処理され、なかなか上手い。
ただし、テログループがウガンダを目指す理由や、ウガンダのアミン大統領がテロリスト側に加担する理由などの説明が割愛されているので、当時の政治情勢を知っていないと判らないところは多い。
(公開当時は、説明しなくても、周知のことだったのでしょう)
興味深いのは、ユダヤの安息日の描写。
犯人からの要求期限間近というのにイスラエル軍もノンビリしていていたりと、これはお国柄かしらん。
とはいえ、電撃の救出劇は尺は短いながらも圧巻。
四機の輸送機が矩形の編隊で飛び立ち、テログループと人質が立てこもる空港建物へとイスラエル軍が銃を乱射しながら突っ込んでいく。
テログループが倒される描写の合間に、短く人質の犠牲者が出たことも描かれ、「救出」といえども無傷では済まないことが物語られる。
イスラエル軍のリーダー格の軍人が撃たれるあたりの描写は少々感傷的だけれど、これはこれで悪くない。
キャノンフィルムの総帥ということでイメージが悪かったメナハム・ゴーランだけれど、イスラエルの監督時代はなかなか手堅い監督だったことがうかがえる。