「何事にも代えがたい豊かな後味をもたらす秀作」草原の河 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
何事にも代えがたい豊かな後味をもたらす秀作
チベット映画人による長編作が日本で劇場公開されるのは初だという。ソンタルジャ監督はアムド地方に生まれ、大学の美術科で学んだ後、奨学金を得て北京電影学院に進んだとのこと。すべての原点には幼い頃に観た移動映画の記憶があったそうだ。
本作の映画に触れて、キアロスタミを始めとするイラン映画を思い出した。グローバル社会、情報化社会の速度とは比べものにならないほどゆっくりとした時間。幼い子供の目線を借りて見つめる世界。そんな子供の一途さにほだされるように変わりゆく大人たちの心。20年前はちょっとしたブームにさえなっていたイラン映画も今ではほとんど上映されなくなり、この類の作品に触れたのは本当に久しぶり。無限に広がりゆく厳しい自然環境で浮かび上がる親と子、さらに世代を超えた祖父と孫との親密な絆が、何にも代えがたい豊かな後味をもたらしてくれる。シンプルだがそのメッセージは強くて普遍。ワンシーン、ワンシーンを大切に見つめたい映画だ。
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