「トランプ大統領誕生の日に鑑賞した皮肉」ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
トランプ大統領誕生の日に鑑賞した皮肉
王兵(ワンビン)の作品と同じく、フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリーは「見た事ない作品はとにかく観たい」と思っています。彼の作品は、対象に対して「とにかく全て観て遣ろう」という意志に貫かれています。ナレーションや説明的字幕はなく、ストーリーのある劇的展開もなく、一つの場所、もの、施設をあらゆる方向から観ようとするのです。従って殆どの作品は長くなります。でも、「全てを観る」と言うのは物理的に不可能で、「何を全てと呼ぶのか」に作り手の主観が必ず入ります。
本作の舞台となるのは、ニューヨークにあるジャクソンハイツと呼ばれる地区です。ここは移民の街として知られ、世界中からの人が集まり167もの言語が話されているのだそうです。様々な宗教施設・商店・日常生活・政治活動などが次々と映し出されます。LGBTへの理解を求めるレインボー・パレード、都市再開発による小さな商店閉鎖への抗議、英語が十分に離せない人への職業訓練。どれをとっても興味深いのですが、編み物をしている老婦人らの世間話が妙に印象に残ったりもします。
移民の排斥・LGBTへの蔑視・ヘイト感情の煽りを謳う新大統領誕生の日にこの映画を観たのは何と皮肉な事でしょう。今現在この街はどうなっているのでしょう。これからどうなって行くのでしょう。人々はどんな選択をしたのでしょう。
(2024/11/8 鑑賞)
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