「少年たちが死亡フラグを立てまくる」ヒトラーの忘れもの つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
少年たちが死亡フラグを立てまくる
この作品が戦争映画だとするならば排除すべき敵は地雷だ。敵は作品冒頭から常にどこかに潜んでいる。姿を見せなくとも登場キャラクターたちの命を刈り取ろうと狙っている。何の前触れもなくその瞬間が訪れる緊張感は凄まじいものがあるね。
それに加えてドイツ人少年たちが死亡フラグを立てまくるのがスゴい。
やれ帰ったらあれをするだのこれをするだのと、「故郷に帰ったら結婚する」と「子どもが生まれた」の変化球を投げまくる。
お前らそんな事言ってたら映画的に死んじまうぞと猛烈なツッコミを入れてしまう。
もう、いつ誰が死んでしまってもおかしくない状況がすっかり出来上がってしまったのだ。
しかしそんな死亡フラグは、見えない敵と対峙する恐怖や過酷な現状を克服するために必要な希望なんだ。
軍曹だって、強制的に希望を言わせることで少年たちを鼓舞していた。
希望がなければ戦えない。敵を前にうずくまるしかない。しかしうずくまることは許されず、ただ追い込まれ精神をすり減らし、現状から逃れることだけを考えるようになってしまう。逃れる方法は死しかない。
物語は終戦後の人間性についてだったと思う。
極端な言い方をすれば戦争中はただ殺し合えばいいが、終戦したらどうだ。スポーツのようにノーサイドで敵味方なく抱き合えるはずもない。
設置された地雷が試合終了のホイッスルと同時に消える訳でもない。
憎しみの心を少しずつ違うものに変えなければいけないが、それは容易いことではない。
それでも軍曹の心のように揺れるものはあるはずだ。
あと、原題が「俺の国」と「地雷原」のダブルミーニングになっていて秀逸だ。
訳したら意味が失われるので邦題は仕方ない。
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