「至るところに残る戦争の傷跡」ヒトラーの忘れもの りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
至るところに残る戦争の傷跡
タイトルが示す「ヒトラーの忘れもの」とは、第二次世界大戦中にドイツ軍がデンマークの海岸線に埋めたまま残った数十万の地雷のこと。
原題は「LAND OF MINE」(地雷の土地)。
1945年5月、デンマークはナチス・ドイツの占領から解放される。
ドイツ軍兵士たちはデンマーク国内から退去するものの、残されたままになっているものがあった。
それは、ドイツ軍がデンマークの海岸線に埋めたままの地雷。
その数は数十万。
デンマーク軍は、それら地雷の除去作業をドイツの少年兵たちに行わせることに決定した・・・
というところから始まる映画は、その後、ある海岸線での物語として展開される。
デンマーク軍のラスムスン軍曹(ローランド・ムーラー)が、14名のドイツ軍少年兵たちに地雷撤去作業を行わせる。
作業は原始的。
地面に腹ばいになった少年兵が、棒で地面を突き、感触で地雷を発見すると手で掘り出して、信管を抜くというもの。
少しでも手元が疎かになると、たちまち爆発してしまう。
映画での描写は、緊迫極まる。
観ている方も息を飲み、最初の爆発(まだ訓練中に起こる)のとき、海岸線での作業での最初の爆発のときなどは、思わずを声を上げてしまったほどだ。
戦争の傷跡、といえば、たった五文字になってしまうが、その傷跡はいたるところに残される。
こんな秘話があったなんて知らなかったが、理解が容易な傷跡も描かれる。
それは、デンマーク国民の心に残した傷跡。
つい先日まで敵だったドイツ人は、デンマーク人からみれば「鬼畜」「唾棄すべき存在」「生きていることすら許したくない存在」。
だから、このような恐怖極まる作業に、冷徹に向かわせることができる。
登場するデンマーク人は少なく、ラスムスン軍曹とその上官、そして、浜辺にぽつんと建つ小屋に住む農家の女と幼い娘。
彼らは皆、ドイツ人を憎んでいる。
夫を、両親を、子どもを、仲間たちを殺した敵として。
ラスムスン軍曹も鬼のような形相で、少年兵たちに作業にあたらせていたが、ひとりひとりと爆死するうち、少しずつ心の内側が変化していく。
この軍曹を演じるローランド・ムーラーが素晴らしい。
少年たちに対して、赦し、命を認め、約束し、最後には、希望を与える。
この映画、デンマークとドイツ合作。
それを考えると、意味深い。