「地雷の恐怖と人間性の値踏み」ヒトラーの忘れもの zhiyangさんの映画レビュー(感想・評価)
地雷の恐怖と人間性の値踏み
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デンマークの海岸にナチスが残した大量の地雷を、捕虜になった素人同然の少年兵が撤去させられることになるが、あまりに残酷な仕打ちに監督していたデンマークの鬼軍曹が次第に動揺して…というあんまりな内容だが、しかも実際にこのような史実があったというから余計やるせない。ドイツ兵に激しい罵声と暴力を浴びせ、少年兵にも最初は情け容赦のなかった軍曹が、餓えと地雷の恐怖に苦しみ泣き叫びながら腕をもがれる少年たちを見ているうちに、無表情で遠い目をするようになっていったのが印象的。ただ単に憐みの感情を覚え、チープな優しさを取り戻したのではなく、スイッチさえ入ればまた元の苛烈な仕打ちを浴びせるようになる辺りの心情は複雑だが、許せないという気持ちと遂行すべき軍の任務、それにこんなことをして許されるのかという迷いの間で、自分はどう少年兵に接してどこまで命令するのか、答えのない逡巡がひしと伝わるようだった。軍曹の迷いとともにもう一つ印象的だったのが地雷で、文字通り一色触発の危険物に延々と塗れ、しかもシビアにその威力を描写する映画なので、終始目が半開きでないと見ていられない。衛が終わった後、絶対にありえないのだが歩道の下に埋まっているのではと怯えて歩く足に力が入らないほど鬼気迫るものがあった。だからこそ、人間性のかけらもなさそうな軍曹の動揺に強烈なリアリティと共感があったのだと思う。
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