「主人公ケイトにものすごく共感」ボーダーライン(2015) 雑子さんの映画レビュー(感想・評価)
主人公ケイトにものすごく共感
不憫でならない、主人公のFBIケイト。
彼女は一般市民的な感覚を持って、法令を守って仕事をしてきた。
それがある日突然上司に喚ばれて別組織に入ってみないか、そうすれば今抱えてる問題の根っこに対処出来ると。
そう言われて志願して入ってみたら、何もかもが言われたのと違う。
国防総省の顧問と紹介されたマットはどうやらCIAらしい(そして国内活動ができないCIAは、国内活動の免罪符のためだけにFBIを利用することがあるらいし。ケイトと同僚の愚痴から察するに、それは米国での悪しき習慣ぽい)。
国内の都市に行くと言われたらメキシコに行かされてる。しかもそこでは、交戦規程もあって無いような状態、歴戦の強者アレハンドロの鋭い感性で敵襲を察知してどんどんけしかけて銃撃・殲滅する。国外で警察も相手にして戦わされる。外国で警察撃つってそれ外交上大丈夫なのかと素人的には思いつつ、ケイトはその流れに乗らざるを得ない…
麻薬組織の撲滅のため、と言われていたのに、どうやらCIAが指向してるのは過去の別のカルテルによる支配に揺り戻すことでの安定化であって、撲滅ではないらしい。
トンネル急襲も所詮陽動にすぎず本来の目的は別にあったと後で知らされる。
ケイトは持ち前の正義感で疑念を当事者や上司にぶつけるが、国家という巨大な目的を持った上位の者たちに踏み潰されて流されてしまう。
最後に、休みの日にお父さんとサッカーをしたいとずっと言ってたメキシコの少年が出てくる。
彼のお父さんは警察で麻薬組織に加担してた(というかあんな社会だったら加担しないわけにいかないと思った)。アレハンドロに利用されてあっさり射殺されて道路に捨てられた。
彼の犠牲なんて、国家の目的からすればゴミみたいなもの。てことなのだろう。
でも家族にとっては…
アレハンドロに、今回の活動は合法だったという紙にサインしろと言われたケイトが、サインできないと泣いたときには、たぶんあのサッカー少年やその父が、その他の無数の一般人の犠牲者が見えていたんだと思う。
CIAの正義は重々分かりつつも、自分が守ってきた一般人たちの味方をしたい思いと、国家のためにはやむを得ないのだという現実で潰される姿がとても悲痛。
なんかこう、いろんなモヤモヤが残りつつも、一般市民的にはケイトには共感せずに居られなかった。