「硬派な感じは好み」ボーダーライン(2015) ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
硬派な感じは好み
ここは原題に沿って作品を振り返ると、殺し屋はベニチオ演ずるアレハンドロだったことになるのか。終盤はトントン拍子で核心に迫っていくが、序盤からのやや不思議かつ渋く抑えた調子から一転してしまうので少し面食らってしまう。復讐を果たすシーンではそれなりにカタルシスも感じられた。それは怖い体験でもあるがとにかくベニチオがクールだった。
検察官であったアレハンドロがプロの軍人と見紛うようなスキルを見せることで彼の復讐心の強さが見受けられた。その背景にはいかに家族が残忍に殺害されたかが伺える。
さて今作の不思議なところ。そのアレハンドロの単独潜入を除いて、基本的にケイトの視点で描かれているのでこちらも状況が掴みにくくなるサスペンス仕立てになっているが、これはまあいい。ただしケイトがあのチームに入れられたのはCIAが国内での活動に制限があるのでその逃げ道として、ということだったがそれにしては扱いが悪く、彼女の存在が作戦そのものを阻害していたのは違和感がある。映画的には隠された事実がある方が良いのだろうが、どうにも上手くない。今作はあえてなのだろうが与えられる情報が少ないし、冒頭の壁の内側に並べられた死体だとか「トンネル」が比喩じゃなかったこととか、トンネル内の暗闇で殺されていくカルテル側の奴らも暗視スコープつけてたのかとか、またあの状況でケイトがアレハンドロにすぐに銃を向けた判断とかもわかるようでイマイチよくわからないよ。
繰り返される俯瞰の映像や光と埃の描写など独特のセンスを感じさせるが、論理性、整合性という意味ではちょっと変わった作品だなと思う。
そしてエミリー・ブラントがFBIの荒事担当というのは面白すぎるキャスティングだと思ったが翻弄される役どころだったのでそこは納得。困った表情が美しい。