「モンスター級にスベる」モンスターズ 新種襲来 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
モンスター級にスベる
ゴジラ(2014)のギャレスエドワーズが2010年にMonsters を監督している。
邦題はモンスターズ/地球外生命体。
話はほとんどつながっていないが、エドワーズがこの映画の製作総指揮にいるので、いちおうMonstersの続編といえる。
Monstersの特徴は、巨大モンスターの具体的な造形と、それが現実的な風景のなかにあらわれることにある。
エドワーズはどちらかといえばVFXに比重する映画人だと思っていたが、Monstersもゴジラも成功をおさめ、近年のSWでも一角なローグワンも撮っている。寡作なわりにバランスのいい監督である。
Dark ContinentはMonstersより予算も大きいが、原案も脚本も監督も実績のない人で構成されている。
おそらくDark Continentは、続編と予算が、たまたま間違って許可されてしまった映画であろう。
この映画のプロダクトとしての装丁と中身のギャップはそこからきている──と思う。
現実に巨大モンスターがあらわれる──すなわち第9地区のように、現実世界に異形のものたちが介在するという発想において、本作でも、アフガン戦線らしき中東に、巨大モンスターがあらわれる。
あらわれるというより、そこは、モンスターの遍在が既知となっている世界である。
映画のコンセプトは、地球軍はモンスター排除の目標を掲げながら、じっさいは、人間どうしで殺し合っている──という不条理である。
ところが、映画はぜんぜん別の不条理を提供する。
中隊長が新兵卒を教育しつつ実戦に率いるわけだが、この兵卒が何かにつけ、パニックにおちいる。
ことあるごとに、泣き、わめき、ダダをこねる。
いったい何度、映画の中に入っていって「おまえうるさいんだよ」と撃ち殺したくなったかわからない。
しかも、この兵卒のパニックが原因で、信じられない我慢強さで彼の面倒を見てきた中隊長が死んでしまう。
この不条理。
そこでわたしはまてよ。と思う。
これが不条理であるなら、ハネケやヌリビルゲジェイランやアスガーファルハディや、周到に不条理をつくっている作家たちと同列の映画と見なしていいのか──と思ったからだ。
これが計算された不条理であれば、これほど大掛かりで贅沢な胸糞もない。マシンごと買い占められる大富豪がUFOキャッチャーに夢中になっているようなものだ。
かならずしもいい映画が記憶に残るわけではない──そう思う。