シリア・モナムールのレビュー・感想・評価
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戦争と映画監督の業
市民の手によって撮影された内戦の惨状を数多く用いて作られた作品なのだが、主人公はパリに亡命していたので、その内戦に巻き込まれていないという点が本作のポイントだ。
主人公は映画監督で、表現者である。祖国の悲惨な現状に自分だけのうのうと助かっている後ろめたさとこれだけすごい映像が溢れているのに、それが自分の手によるものでないことへの、表現者としての嫉妬心が入り交じる。戦争の悲惨さと表現者の業が相合わさって描かれる、奇妙な作品なのだが、当事者と当事者になれなかったものの断絶をここまで見事に描いた作品はなかなかない。
映画監督ならすごい映像を撮りたいと思うのは、当然だ。戦場カメラマンも動機の全てが社会正義ではない。戦場でしか撮れない「すごいもの」のために命をかける。
だが今、シリアで「すごいもの」を撮っているのは市民なのだ。主人公は、映画監督としての敗北感と、シリア人として故郷を憂う気持ちに引き裂かれている。
今、この国にいる有難たさ
仕事で鬱々とする日々を過ごす私ですが、海の向こうでは、いつ自分が、路上に血溜まり残して、骸になるか分からない日々を、過ごす方々がいると知って、余計気が滅入るわけです。手振れと鮮血で、くらくらする映像は、3D映画が、子供騙しに思えるくらい強烈です。
ところで、海岸に打ち上げられる死体になる覚悟で、小舟に揺られて、産まれ育った国を捨てる気持ちは、どうしたら、想像できるのでしょうか?。誰しも、好きで難民になるわけありません。
テレビでよく耳にする内戦という言葉。その言葉が映像になると、目を反らしたくなるから、不思議です。正直、本作は楽しくありません。それでも、言葉では伝わらない、何かを共有できる映像が、皆さまをお待ちしています。きっとテレビのニュースが、違って見えますよ。ぜひお試しあれ。今、この国にいる有難さを、認識しながら。
子供の笑顔と脚を失った猫
公開してすぐに観に行きたかったのだけれど、結局今日になってしまった。。。
昨年の「The Return to Homs」とはまた違った生々しさ。もう、何のために人を殴っているのか、撃っているのか、自分たちも理解していない。単に楽しんでいるように思えるし、きっとそうなのだろう。
この作品を見ると、欧州へ逃れた人たちが本当に奇跡だったと思えてくる。
命がけでカメラを回したシマヴ。彼女のためにも多くの人に観てほしい。
子供たちの元気な姿と片足を失っても、懸命に逃げる猫に胸打たれました。
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