「Young Shion Sono」ひそひそ星 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
Young Shion Sono
20年前以上に作ろうとして、制作費の枯渇で断念した作品と言うことである。
押しも押されぬヒットメーカーに成り上がった監督が、その若い頃に心残りだった残骸である絵コンテや脚本を引越しの毎に捨てられずに一緒に連れて行ったという。
あの頃の宿題を、伴侶となった女優を主役にリベンジに燃えるといった感覚なのか・・・
作品自体は文学的というか、芸術的というか、それまでの園作品のエンタテインメント性がグッと押さえられた演出である。初期の監督作品を知ってる人は懐かしいのかもしれないが。観覧したところが、東京フィルメックスという映画祭及びコンペティションの企画内であったので、より一層その商業主義と一線を画す意図にピッタリなのだろう。
人間の記憶がモノと結ばれ、気持ちが倍増していく。そして淡々と流れる時間と繰り返される暮らし。時間を過ごす、やり過ごすということは、果てしない宇宙を旅するようなものであるというメタファをそのまま一種のSF映画っぽくしたテーマ。
常に差し挟まれる曜日や日にちのテロップ。人間達の記憶を刻み込んだ多種多様なモノがしまい込まれる段ボールが宅配される先は何年もかかる惑星間。
ハリウッドやアニメでは描かれることがない、宇宙航行中の果てしない時間の表現。
そして、監督のテーマでもある『福島』。ロケ地は常に変化を続ける。白黒で描かれる今作品の唯一のカラーになる瞬間のカットが元々街であり、現在は雑草が生い茂る荒れ地で、バックの強い波飛沫、遠く澄む青空に福島への愛を感じさせてくれる。
上映時間は100分だが、それ以上に長く長く体感時間は感じた。
ベクトルの逆が『熱帯魚』ならば、これは静とモノが発する音を演出の依り代として表現している。
感想としては、やっぱり、園監督の激しい作品を観たいなぁ・・・(ふぅ)