「心情の揺れ動きに、2時間泣きっぱなし」リリーのすべて 1799さんの映画レビュー(感想・評価)
心情の揺れ動きに、2時間泣きっぱなし
初めて性別適合手術を受けた方の伝記小説が原作の『リリーのすべて』。
アイナーが自分の中の「女性」に気付く過程、それを受け入れられるようになるまでの妻・ゲルダの葛藤を、1920年代の美しいヨーロッパの風景と共に非常に繊細に描いた作品です。
本当にエディ・レッドメインもさることながら、アカデミー賞助演女優賞を受賞したアリシア・ヴィキャンデルの演技も非常に心に迫るものがありました。
おそらく、この映画のあらすじなどには、「夫が女性となるのを受け止めた妻の話」のような文言もあったかと思いますが、そんなあっさりと受け入れられたわけではありません。
愛し合う夫婦として6年一緒にいるのに、夫のことを愛しているのに、彼は「彼女」に変貌しようとしている。違う男性とキスしている場面を目撃した衝撃や「愛する夫」が消えてなくなる様子は、夫を愛しているからこそ、ゲルダは簡単に受け止めることができないのです。
「妻のことを愛しているけれど、心は女」だと主張するアイナー。「愛する夫が別の女性になろうとする姿」を目のあたりにしつつも、ゲルダはアイナーを愛している。これほど、つらく切ない愛があったでしょうか。
そうした2人の気持ちに、見ている方も涙涙涙。アイナーとゲルダが泣くたびに、こちらも泣く。
初めから「リリー」が存在しないからこそ、アイナーとゲルダの感情が手に取るようにわかってしまいます。上映中は終始、あちらこちらからすすり泣く声が聞こえていました。
「トランスジェンダー」という言葉がにわかに日々のニュースでも聞くようになった今、改めてその問題に真摯に向き合った映画だと思います。
1920年代は、きっと今ほどトランスジェンダーに寛容的であったわけではないはず。差別や偏見もあったでしょう。
トランスジェンダーを抱えている人はどういう気持ちなのか、そして私たちはどうするべきなのかを窺い知るのに、この映画はきっとよいきっかけとなるはずです。
そして、絵画のように美しいラストシーンは、きっと群を抜いて美しい締めくくりでしょう。リリーのストールが飛ぶ画が非常に印象的でした。思い出しても泣ける。
余談ですが、エディ・レッドメインが本当に美しかった…!そして、一物がちらっと映ったときは、この映画の中で一番凝視しました(笑)。
そんな意味でも、レッドメインファンの方にはこの映画は必見かもしれません。