「財閥のバカ息子に喝!」ベテラン おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
財閥のバカ息子に喝!
先週末公開の「ベテラン 凶悪犯罪捜査班」を観ようと思ったら、シリーズ第2作であることを知り、どうせなら先に1作目をと本作をアマプラで鑑賞。韓国らしい刑事ものとして、なかなかおもしろかったです。
ストーリーは、広域捜査隊に所属し、少々行きすぎたところもある型破りなベテラン刑事ドチョルが、賃金不払いトラブルの末に自殺を図った社員に対する捜査に疑問をもち、その裏に親会社を経営する財閥の関与を疑って独自の捜査を続け、警察上層部の圧力に阻まれながらも、同僚たちと一丸となってじりじりと真相に迫っていくというもの。
韓国の警察はどこもこんな感じなのかと思うほど、既視感のある軽いノリから始まります。暴走ぎみの主人公、ひと癖ある同僚たち、出世欲だけのチーム長という問題だらけの刑事たちが、普段はふざけた捜査をしているように見えても、いざとなったら正義のために団結するという構図は、「犯罪都市」シリーズそっくりです。といっても、製作年を考えれば、このイメージを決定づけたのは本作なのかもしれません。
軽い序盤に対して、物語が進むにつれてシリアスな雰囲気が強まり、終わってみれば熱血暴走デカの執念の捜査が最も印象に残ります。ドチョルの人情派刑事としての活躍もおもしろいし、それを支える同僚たちも熱いです。そしてなにげに、ドチョルの妻の姉御っぷりがイイ!わずかな出番ながらしっかりと存在感を発揮しています。
一方で、ドチョルたちが立ち向かう財閥は、庶民の恨みを一手に引き受けるような典型的な描かれ方をしています。財閥3世テオの子供のような幼稚な言動、金で人を支配しようとする財閥の傲慢さ、大企業にありがちなトカゲの尻尾切りなど、観客の嫌悪感をじわじわと上げていきます。
そんな財閥企業が悪事を隠蔽しようとすればするほどボロが出始め、しだいに追い詰められていく様子は小気味よく、クライマックスでは、溜まったストレスを一気に発散させるかのような激しいカーアクションに大興奮です。そこからさらに衆人環視のもと、ドチョルとテオのタイマン勝負が熱いです。
ただ、全体的におもしろくはあったのですが、絶賛とまではいきません。まず、ラストのタイマンでは、テオをギタギタにぶちのめしてほしかったです。マブリー登場でもしや…と思いましたが、さすがにそれはないですね。あと、そもそもテオがガキすぎて、ドチョルの相手としては物足りないです。鑑賞中に「ナッツ・リターン」を思い出し、テオの悪事を暴くはずが、ラスボスとして父親が降臨し、結果的に財閥そのものを徹底的に追い込んでいくという展開でもよかったと思います。
主演はファン・ジョンミンで、熱血ベテラン刑事を好演しています。脇を固めるのは、ユ・アイン、ユ・へジン、オ・ダルス、チャン・ユンジュら。