「過酷なのに・・・とにかく美しい 圧倒的な映像と静謐な自然に溶け込む坂本龍一の“音”を観る」レヴェナント 蘇えりし者 菊千代さんの映画レビュー(感想・評価)
過酷なのに・・・とにかく美しい 圧倒的な映像と静謐な自然に溶け込む坂本龍一の“音”を観る
以前四国のとある雪山に登った。
夏場は重装備でなくても登れるような山だが
雲海が広がる四国の雪山は、まるで仙人の居る世界のように静謐で美しかった。
山頂で見たあの景色は二度と忘れられない。とても言葉では表現できないほどの神々しい景色に圧倒された。
五感は研ぎ澄まされ、天国と下界の境目があるとしたらこんなところではないだろうか、そう思った。
この作品も、圧倒的な映像美。それこそ天国と下界の境目にでも入ったかのように美しい。
そして、フィクションという事を忘れさせる映像からは、その過酷さがひしひしと伝わってくる。それらは臨場感とでも言えば良いのだろうか、恐らく普通に世の中で暮らして居る中で体感することは無いであろう“境目”、そんな境界に接したかの様な体験ができる作品だ。
この作品は1823年が舞台、日本は江戸時代後期徳川家斉の治世、アメリカでは第5代大統領ジェームズ・モンローが、いわゆる「モンロー宣言(モンロー主義)」を発表、「アメリカ合衆国はヨーロッパ諸国に干渉しないが、同時にアメリカ大陸“全域”に対するヨーロッパ諸国の干渉にも反対する」そんな西部開拓時代を生きた実在の罠猟師ヒュー・グラスの半生と、彼が体験した過酷なサバイバルの旅を描いている。
実話はをもとに描いたフィクションなのだが、まるでノンフィクションの復讐劇を見ているかのようなリアルな“画”づくりが凄い(故に+R15)。アカデミー賞最多12部門ノミネート、監督賞・撮影賞・主演男優賞を受賞、惜しくも視覚効果賞の受賞はならなかったが、VFX効果と撮影はかなり見応えがある(この年の視覚効果賞は「エキス・マキナ」が受賞したが、こちらも凄い)。
主人公のグラス( レオナルド・ディカプリオ)が熊に襲われるシーンはVFXである事を完全に忘れさせる、終盤のグラスとフィッツジェラルドの格闘シーンは本当に殴り合わせディカプリオは鼻を骨折したが、そのまま撮影は続行したという逸話も残っているほど迫真。
そして何と言ってもロケが凄い!手つかずの自然が残るリアルな未開の土地で、自然光のみを使うというこだわりのため、1日の撮影できる時間は1時間半程度だったという。
映画館のスクリーンで見てこその作品だが、テーマがテーマだけに今後スクリーンで見る機会は訪れないかもしれないが、また劇場公開されたらその素晴らしい映像と坂本龍一の音楽を堪能したい作品だ。いつか、「坂本龍一・映画祭」を真剣にやってくれないだろうか。