「ストーリー★1 水槽の亀★5 スタローンは★10。」クリード チャンプを継ぐ男 まこさぽチャンネル(さぽしゃ)さんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリー★1 水槽の亀★5 スタローンは★10。
皆さん絶賛なんですね。
"現在上映中の作品は甘口で"を信条(CREED)"としている者としては、ちょっと心の葛藤がありました。
もちろんですね、スタローンとか、シュワちゃんの映画は、昔お世話になった恩師とか、叔父さんに会いに行くような気持ちになり、だいたい甘くなるんです。けど、今回はちょっと違います。
原題「CREED」は"信念""信条"という意味ですが、逆にそれを私に捨てさせた本作。恐るべし。
(かなーり長くなります)
"ロッキーⅠ"冒頭のオマージュで始まり、なるほど-、タイトルは「CREED」ですが、ロッキーネタを随所にちりばめ、最近多い40オーバーのノスタルジックを止まらなくさせる商法だと分かります。ええ、そのつもりで来ましたよ。と思って、微笑んでいました。
でも、あまりにもストーリーにコストがかかってない!
アドニスとビアンカ(テッサ・トンプソン)の出会いからして、あんまりだ!
アパートの下の階に住むビアンカが、大音量で音楽を聞いてて、アドニスむかついて部屋に行く。
やべ、いい女wってなる。
ランニング中に、ビアンカのポスターを見てバーに入る。
歌う姿を見る。
やべ、いい女wってなる。
食事に誘う。
体重とか気にしないのか、油ぎとぎとのハンバーガーを頬張りながら、ビアンカが聴覚障がい者であると知る。
どうやら進行性の難聴で、将来は聞こえなくなる可能性も。
「今を一生懸命に」的なことを言われ、決意新たにするアドニス。
やべ、いい女wってなる。
2人で過ごす時間が多くなり、良い感じに。
やべ、いい女wってなる。
でも、ロッキーがコーチをしてくれることになたっら、何も言わず引っ越そうとするアドニス。え?最近忙しくて、言うの忘れてたと。
ふーん。女の私が、ふーん。
また、ビアンカも補聴器での会話に支障がないのに、アパートが揺れるほどの大音響で音楽を聴く意味が分からない。そしてそれを注意された時の態度、なんなん?
2人が出会う先行型、アドニスが決意を新たにする先行型のエピソードですよねー。
ええ、分かりますとも。
そもそも、アドニスがボクシングをせずにはいられない、切実な理由が分からない。
何か成す人には、それをせずにはいられない"切羽詰まった感"があると思うんですよ。
なだんろう。この余裕。
ラストファイトで、理由らしい台詞がありますが、あまり説得力がないんです。
またロッキーも、なんでアドニスのコーチをやろうと思ったのか。
ロッキーⅢで、「父(アポロ)がコーチしてやっただろ。今回はお前が俺をやれ」って、アドニスが現れるんです。
あと、ほら、"ロッキーⅤ"で、教えるのに失敗して、ストリートで弟子をぼっこぼこにするという、ドン引きするエピソードがあったじゃないですか?
教えるのには、慎重になる筈でしょう?
「アポロに似てる」とか言って、情にほだされた感のロッキー。
世襲?
チャンプを受け継ぐ者だかなんだか知らないけど、アドニスのこのチャンスって世襲ですよね?
なんか、ここちょっと嫌いなんですよ。ひねくれてて、すみません。
アポロのお葬式以来、会っていない養母:メアリーがボクシングをやることを反対しているのに、そこをわきに置いてもコーチをやる理由が見えない。そしてやっぱり、メアリーには連絡はしない。
普通、セコンドがロッキーで夫が亡くなり、今度は息子のセコンドがロッキーってなれば、穏やかではないと思うんですよねー。そこ、フォローしなくていいの?
あ、こまけーことはいいんですね。分かります。
そんなこんなでアドニスがトレーニングを始めるんですけど、体がボクサーっていうより、モデルみたいなんですよね。
もちろん、今までのロッキーのトレーニングシーンの"オマージュ"もありますよ。けど、余裕の表情のアドニス。
そりゃ余裕ですよ、「チャンプを受け継ぐ者」ですからね(邦題正解じゃん!)。
DNA的に苦しんだりしないんでしょう。クールな表情で、切り抜けます。
で、初戦!
今までサラリーマンで、我流でボクシングしてて、でも、ほら、賭けボクシングとかやってたしー、経験あるもん!あるもん!で、勝つ!
ええ、勝つんですよね。
何故って、アポロの息子だもん。DNA的に、アポロのボクシングセンスを受け継いでるから!昨今では、フォースも、ボクシングセンスも、受け継ぐモンなんですね?
父親へ及ばない自分を嘆いたり、苦しんだり、だからこそ必死に努力したり。
そういうのないんですよね、アドニスには。
この時、ビアンカがニタニタ笑顔でリングに上がって来るのを見て、「イラっ」て来たのは私だけでしょうか?
「貴方がそんなに強いって、聞いてなかったぁー」みたいな。
きゃらきゃらっ!みたいなー。
うざ。
あ、すみません。
"フットルース"の意地悪顔ヒロイン、エリエル(ロリ・シンガー)くらいイラって来ました。
その後のソファーでのHシーンとかも、ビアンカが自分で作った曲をアドニスに聴かせて……。またその歌詞が、もう、うわーってなるの。
「私をあげる」とか言って。
うわうわうわうわ……って。
水槽のロッキーの亀も「あれ?ロッキーとエイドリアンとは違う。思ってたんとちゃう」って言ってました(笑)
あ、嘘です。すみません。
思い出してください"ロッキーⅠ"を、あのロッキーとエイドリアンの出会いから、恋に落ちるまでを。
ロッキーの不器用な優しさと愛情表現、奥手のエイドリアンが女性として成長していく姿。フランス映画みたいなんですよ。
一回勝ったアドニスは、ちょっとしたことで、やんちゃな男の子と喧嘩しちゃうんですけど。それが元で、ビアンカとの間に亀裂が入るんです。
「私と貴方、別々な道を行きましょう」とか言われちゃう。
ドアの外で、むっちゃ謝ったアドニスが言うんです。
「今の俺には、君が必要なんだ」
えー!?
ロッキーの部屋に居候してコーチして貰うとき「最近、忙しくて、君に言うの忘れてた」とか言って、知らん顔で引っ越そうとしてたよね?
あ、私このビアンカに、女性としての包容力というか、癒やしというか、アドニスが「必要とする理由」が、最後まで全く分からなかったっす!
でも君が必要だとか言いながら、ラストファイトの後、腕を絡めるビアンカの方を見なかったよね?コメントも養母への感謝だったよね?
「ビアンカァー」って叫べとか言わないけど。
いや、叫んだら笑っちゃうけど。
母親への感謝も大事ですけど。何のためのビアンカか!っていうね。
リングに上がって来る女子がいないと、ロッキーっぽい映画作れないし。みたいな。
ええ、分かりますよ。
でも、弱ってる時だけ、必要だとかいう自分勝手な男なんですよ、アドニスって。
実はこの「君が必要だ」の後、寝落ちました。ラストファイトまでです(笑)ラストファイト前で、2PACの"Hail Mary"を聞くまで。
だって、一回アドニスの鼻をへし折る為に、無理矢理に喧嘩させるんだもん!
ドラマ「噂の刑事トミーとマツ」では、トミーが「男女!」と言われるとキレて怪力を出してたけど、「ベイビー・クリード」でそこまで怒る?強いヤツと対戦させて、凹ませてよ。凹んでから必死で努力してよ!って思いました。
ほんと、コストがかかってないんですよ。
父ちゃんの名前出して、ロッキーにコーチしてもらったやん?
むしろ、使える者はなんでも使ってのし上がるくらいが良かった。
格好つけんな!って思ったんですよね。
あの、「冒頭100分」と、ラストファイトシーンはいいです。
寝落ち間は、家に帰って来てDVDで補完しました。
トレーニングより、減量より、ロッキーの看病の方が苦しそうじゃん(笑)!
あのー、ですね。
トータル、ファンムービーっぽいんですよね。
動画サイトに、クオリティの高いファンムービーがアップされてました感。
スピンオフと言えば聞こえはいいですけど、公式な二次創作っぽいんですよ。
アドニスやビアンカのキャラも表面的で、信用ならない。魅力がない。
登場人物先行してストーリーを考えるから、おかしなことになるんです。
偉そうにすみません。
「クリードのパンチと、ロッキーのブローを受け継いで!」という実況中継を聞いて、唖然です。
小説の世界ではこういうの、「ドリーム小説」と言います。
みんなロッキーと同じ音楽で、暗示にかかってないかい?
良い感じで入って来るかっけー音に、やられてないかい?
いや、映画の内容ではなくて、「そうそう、俺が撮りたかったの。こんなん!」の方に、感情移入してないかい?つまり、主人公より、監督に共感してないかい?
あ、でも、ラストは泣いたんですよ。
老いと、折り合いを付けたロッキーに。
別の戦いに向かう、老いたロッキーに。
でも、どうしてももやもやしたので、家に帰ってからロッキーⅠ~Ⅵまで"おさらい"したんです。
Ⅰ
ロッキーがエイドリアンと出会い。アポロとの対戦のチャンスを掴み、現チャンプ相手にボロボロになるまで戦う姿。本作のラストは、Ⅰオマージュですね。
Ⅱ
引退する筈だったけど、お金を稼がなくちゃいけない。エイドリアンは妊娠。過労と心労で早産する。アポロは度重なる中傷に嫌気がさして、もう一度ロッキーと戦いと言う。そして再度ファイト!ロッキー勝利!
Ⅲ
センスの悪い豪邸にすんで、すっかり豪華な生活にだれだれなロッキー。新たな対戦相手が!そう!飛行機に乗るのが嫌で、いつも動物用の麻酔銃を撃たれるミスターTです。いいキャラ!アポロのコーチにより、クラバー(ミスターT)と対戦して、勝利!
Ⅳ
アポロが対戦中に死亡します。相手はロシアのドラゴ。ロッキーは、ハングリー精神を取り戻して、ドラゴに立ち向かううんです。そんなロッキーに寄り添う、エイドリアン!
あ、Ⅳが一番好きです!今考えても、何故ロッキーがドラゴに勝てたのか……。あしたのジョーが、金竜飛に勝った時みたいですよね(笑)
で、ロッキー勝利!
Ⅴ
ロッキーはⅣで激しいパンチを浴びたせいで、脳障害に陥るんです。もう、ボクシングはしちゃいけない!と言われる。ので、町で拾った弟子登場。ガンですよ。ガン。
でも、エイドリアン曰く「ガンには心がない」んです。
またロッキーも、ガンがリングに上がる姿を見て、バーチャルボクシングに昂じる。ガンは弟子っていうか、ロッキーのアバターなんですよね。
そこで最終的に、ストリートでガンをぼっこぼこにします(笑)
Ⅵ
エイドリアンに先立たれ、老いと折り合いをつけられず苦しむロッキー。そこに"ロッキーⅠ"で悪い子だったマリーが、結婚して子供までいる。一人息子とのジュニアの関係は最悪。
で、現役チャンピオンと最終ラウンドまで戦う姿を、息子に見せるんです。
アポロ、クラバー、ドラゴ、ポーリー、ミッキー、エイドリアン、忘れちゃならないドラゴの鬼妻!上げたら切りがない!みんな、みんな魅力的!
それなのに、本作のコンラッド、なんなん?どんだけつえーやつか分からないし、ラストファイトのあの体!ええ!?
でも、Ⅰ~Ⅵを全部おさらいして、はっとしたんです。
ロッキーが言った「ボクシングは人生と同じ」の意味。
「でも人生はどんなパンチよりも、重くお前を打ちのめす。だが、人生とはお前が強く殴り返すかじゃない。どれだけきついパンチを打たれても、休まず前に進み続けられるかだ!(ロッキー・ザ・ファイナル)」
本作を含めた39年のロッキーシリーズで、それを証明してくれたスタローン。
本作でも「前に進む」決心をします。葛藤、克服、成長(アドニスはあんましてないけど)、登った後の人生と、どう折り合いを付けるのか。
今回も、勉強させていただきました。
やっぱスタローンは、恩師です。
先生、今頃気付いてごめんなさい。そしてありがと。
そんなロッキーに、号泣です。
色々と書きましたが、"ロッキーⅥ"からのたぶん演技派スタローンに(爺)萌えしてる私としては、その部分は大満足でしたよ。
なんだよ、満足してるんじゃん!
ホントすみません!