「三重奏」カノン 由由さんの映画レビュー(感想・評価)
三重奏
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ひどい母親だという想いが、過去を知ると、可哀想な母親だという想いに変わる。
人は会ってすぐに理解できるものではなく、その本当の心は深く、複雑で表面には見えないことがあるのだと思った。
自分にはどうしようもできないことが、人生には沢山起こる。父が死んだときに母の心を突き刺したのは、父の行為と、配慮の足りない愛人の言葉、それから、同じように父の死を悲しみ苦しんでいた祖母の言葉だった。そのとき祖母は、息子の死が辛くて、言わずにはいられなかったのだと思う。そして、自分の言葉が母を傷つけたことに、罪悪の念を持ちつづけたのだろう。
人は弱いものだと、あらためて思った。自分にはどうしようもできないことが起こったとき、辛いことから逃げたり、欲に負けたり、傷つくことを怖れて何もできなかったりする。それは、仕方のないことだと思う。
そんなときに、カノンは、辛い心を慰め、人と人が繋がり、強く前を向いていこうとする音楽のようだった。
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