ババドック 暗闇の魔物のレビュー・感想・評価
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社会派リアルホラーの傑作。
息子を産んだ日に夫を事故で亡くし、哀しみを癒す余裕もないまま7年間奮闘してきたシングルマザーが、周囲の適切な理解や援助を得られずに精神崩壊していく恐怖を、ねっとりじっとりと描いていく。
息子のサミュエルはADHDっぽい言動が目立ち、いつも母親のアメリアを悩ませている。小学校に自作したボウガン風の武器を持って行ったり、従妹に化物の話をして怖がらせたり、ついには鼻骨を折る怪我をさせたりと、ひっきりなしに周囲との軋轢を生み出し、大好きな母親を疲弊させていく。序盤から中盤にかけてはむしろ子供が化物に見えるほどだ。
この映画の出来事を、老人介護の仕事と子育てに追われ、夫の死からも立ち直れないまま、どんどん社会から孤立していくアメリアの主観と捉えるなら、これはもう福祉だのメンタルヘルスだのといった極めて現実的でありふれた、それだけにメチャクチャ怖いお話だということになる。
ミスター・ババドックという絵本の化物に仮託された不安や恐怖は、どこにでも、誰にでもあって、決して消し去ることはできない。心の地下室から出てこないように、なんとか飼い慣らして生きていくしかない。あのラストはそういう意味だろうと思う。実に真摯な落とし所といっていい。満点にしなかったのは、飼い犬の忘れられっぷりが可哀想すぎたから。
おおげさな謳い文句は別にして。
なかなか秀逸な出来具合いで。
映像とか音とかこけ脅しの演出ではなく、日本的なじわじわジックリくる恐怖の組み合わせでじっくり怖がらせてくれます。
情緒不安定なシングルマザーとこれまた情緒不安定なその息子。話が進めば進むほど誰が正常なのかわからなくなってくる。または、ホントにババドックがいるのか?
全て親子の幻想とでもかたづけられるし、と言っちゃうとホラーはみんなそんなもんだけど。
マミーの豹変ぶりがシャイニングで恐怖。
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