「頭カラッポの方が夢詰め込める」ターボキッド みじんコさんの映画レビュー(感想・評価)
頭カラッポの方が夢詰め込める
核戦争により文明が崩壊した1997年。荒廃した世界で繰り広げられるバイオレンスアクション映画…
と聞くと凡百のマッドマックスフォロワー映画かよ…と鼻白んでしまいそうだが
『ターボキッド』の世界では石油が枯渇しまくって車もバイクも使用不可、主人公も悪党達もチャリンコで爆走(?)しているという設定を考えついた時点でこの映画の『勝ち』は確定したような物、悪党達がヒャッハーと来襲するシーンが全てギャグシーンとして成立してしまうヌルさが何とも心地良い。
さらに主人公でアメコミヒーローに憧れるヘタレ少年キッドが地下に埋もれていたパワードスーツを拾うご都合展開や、エキセントリックでキュートな美少女アップルとの淡い恋の芽生えるボーイミーツガール展開など、今やったら悶絶死級の気恥ずかしいストーリーも、この映画の徹底した80年代B級映画テイストによって何だか許せてしまう
…ってか愛おしささえ感じてしまうという『映画の持つマジック』が発生してしまっているのだ。(ロゴデザインとか最高!!)
チープな透過光SFX描写や『アダム・チャップリン』みたいな過剰で笑える残酷描写も楽しい。
個人的に特に素晴らしいと思ったのはBGMが80年代風のチープなシンセサウンドにこだわって作られていて、4つ打ちのディスコ・ビートに乗せてフラッシュ・ダンスみたいなチープなシンセが縦横無尽に鳴りまくる…これだけで5億点は出てるでしょ?!
おしむらくはクライマックスにボニー・タイラーの『ヒーロー』みたいなボーカル曲がかかったらさらに追加で100億点は出てたのに…いや、本当にそこだけ惜しい!
物語のテーマはヘタレ少年が冒険と恋を経て『男』に成長するというシンプルでありきたりな物だけれど、ラストの80年代的ロマンチック描写が何ともキュートで元気が出るんですよ!!!
日頃、小難しい社会性をメタファーにした映画ばかり観て講釈垂れているような映画オタに『頭カラッポの方が夢詰め込めるだろ!』と気付きを与えてくれる愛おしい作品です、
おススメ!!!
2015年製作のカナダ映画でアルバート・ピュンの『ラジオ・アクティヴ・ドリーム』テイストを味わえるとは…本当に長生きはするもんだ…
まったく、映画っていいよな…