「面白いけど気持ちが乗らない」最愛の子 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
面白いけど気持ちが乗らない
ストーリーは本当に面白かった。ポンポンが見つかるまでの前半の主人公をティエンが、後半をリーが務め、二部構成みたいになっているけれど、どちらも良かったと思う。
前半のすごく中国っぽい考え方の人々が強烈だよね。とにかく自分の利益のことしか考えない。
特に、護身の道具を持っていないと情報提供者に会うことすらままならない社会に、誘拐以上の恐怖を感じた。
困って弱っている人間に対して弱味につけこみ更に攻撃を加えて奪おうとする者には人間性などあるのだろうかと恐ろしくなる。
愛する息子を必死に探す父親と、人の心を解さない人々の対比としても面白いし、そういった人々が蔓延る社会は駄目だと批判しているようでもあったね。
その一方で、極端に善き人も登場させてバランスをとろうとしている気もしてくるけど、それはまあ、ね。
後半はリーを演じたヴィッキー・チャオの鬼気迫る演技がとにかく見所。
彼女だけ熱が入りすぎてて他の演者との温度差が凄かったけど、リーの、都会に馴染めていない感じ、浮いた感じが出ていて良かったようにも思う。
それで、ストーリーと内容に関しては文句なく面白いと思うけど、ちゃんとした理由があって星3つにする。
全体的に間延びした感じで気持ちが乗らなかった のが原因だ。
具体的には、農村から逃げる場面やリーがバスから飛び出した後の場面などの描写が長すぎて、強制的に集中力を切らされてるのかと思ったほど。
無駄に長いだけの無意味そうな描写も最後まで観てから考えるとちゃんと意味があったし、二回目の鑑賞であったなら入り込めるかもしれないけれど、今は第一印象を大事に評価を下げる。
リーが妊娠を知らされるラストシーンで、彼女もまた旦那に嘘をつかれていた被害者であると知ることが出来る。その後の本人映像からも、この作品は最初から悲劇のリーの物語であったとわかる。
上に書いた長すぎる描写の場面は主にリーが酷い目に合う場面なのだが、初見でティエンに肩入れしている状態で可哀想なリーをたっぷり見せられても何の感情も湧かないよ。
だって、リーに対してどう感じていいのか見定めている最中なんだもの。
徐々に盛り上がっていくならいいが、リーのほぼ初登場の場面で悲劇のヒロイン演出をするのは明らかに間違いだった。