劇場公開日 2016年6月4日

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「疑い深き 隣は何をする人ぞ」団地 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5疑い深き 隣は何をする人ぞ

2016年9月5日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

閑静な団地へと引っ越してきた山下ヒナコ・清治夫妻。
しかし引っ越しの数ヶ月後に突如、夫の清治が謎の失踪を遂げる。

「裏山への散歩」「旅行」と二転三転するヒナコの証言、
用途不明のドライアイスと大量のプラスチック容器、
時折山下の部屋を訪れるカルトじみた謎の青年ーー
疑心暗鬼と恐怖に駆られる近隣住民たち。
マスコミの追及にも不敵に笑うヒナコは果たして
狂気の殺人者なのか? 全ての謎が解けた時、
あなたは驚天動地の結末を目の当たりにする。

「あり得ないことがあり得るのが団地だーー」
古びた団地を舞台に現代社会の闇を描く、戦慄のサスペンス作。

……ええ、はい、以上は山下さんの近隣住民目線でのあらすじでした。
あの、すいません、この映画、真っ赤なコメディです。
だいたいこんなスジだけど、現代社会の闇とか
戦慄とかそんなのほぼ無いです。全然怖くないです。
ほぼ笑いっぱなしです。結末は驚天動地ですけど。
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観たかったのだけどやっと近所で上映してくれた。
映画賞を総ナメにしたサスペンス作『顔』以来16年振り
のタッグという阪本順治監督&藤山直美主演だが、
今回はコメディ。主演コンビが藤山直美&岸部一徳
というだけで既に笑ってしまいそうなのだが、
主演コンビも他キャストもみんなおかしいし可笑しい。

苦情対応におろおろするばかりの石橋蓮司、
噂話に勝手に尾ひれを付けていく東西南北4人衆、
斎藤工ももはや宇宙人レベルで非常識(けど親切)な男を怪演。
(公開中の『ゴーストバスターズ』といい、
 今年は偏差値低いイケメンが流行りなのか)

何よりも藤山直美&岸部一徳コンビ。
コメディ映画ってマジメな顔でやればやるほど笑えるもので、
真剣な顔でボケ倒す2人の可笑しさと言ったら無い。
床板を挟んでの夫婦漫才には笑いが止まらないし、
終盤の藤山直美の大声でのやりとりとかも、あんな
状況であなたは何を冷静に喋っているのかと(笑)。

終盤の展開は映画ジャンルすら変貌させるほどの
キテレツ展開なのだけど、まああんまり深刻な解釈
をせずに「んなアホな」と笑っていれば良い部分かと。
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少しだけ真面目ぶって書くなら、この映画で感じたのは、
何の事情も知らないのに勝手に想像を膨らませて
他人を悪人扱いする隣人やマスコミの身勝手さ滑稽さ。
そのくせ本当に助けが必要な人を助けないのは何なのか。
自分の隣人が人殺しかもしれないという恐怖と好奇心は、
他人の子どもが傷付けられている事より優先されるのか。
自分への干渉は嫌うくせ、自分の気に入らない事や
自分に害が及ぶかもしれない事には躊躇なく苦情をつける。
吉住夫妻などその最たる例で、今に始まった話じゃ
ないとは思うが、あんな人が近頃は多過ぎやしないか。

ホッとされるのは、そんな中でも愚直に生きる山下夫妻の姿。
断ることを断れない清治とヒナコが久々に本気で働く姿は
生き生きしていたし、「キレイな歌声やったよ!」
と思わず声を掛けるヒナコは素敵だった。

辛くても悲しくても頑張って生きる。
鈍臭くてもいいから、誰かに親切に優しく生きる。
噂話じゃなく、面と向かって話した友人なら、その
頑張りをきっと理解してくれる。それに、主人公たち
のようにそれが報われるかどうかは分からないけど、
大事な人に胸を張れる生き方をする事は、
例えその大事な人がいなくなってしまっても
多少は心の支えになってくれるものだと思う。
あんなキテレツを信じなくても、
もしも見ているなら、もしもここにいてくれたら、
そう思うだけで、少しだけ頑張れる気がしないだろうか。
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という訳で、かなり笑えてかなりキテレツで
ちょっとだけ切ない、ヘンな映画でした。
観て損ナシの3.5判定で。
大声で「イマイチでしたかぁ~~?」と聞かれたら、
僕なら「ダジャレ以外は面白かった」と答えます。

<2016.09.04鑑賞>
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余談:
キレイな歌声だったけど……
少年よ、なぜ今『ガッチャマン』なんだ……
2016年なんだしそのぅ……まあいいんだけど。

浮遊きびなご