「キャスティングは最大の演出」ハッピーアワー バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
キャスティングは最大の演出
なんだか凄いの観ちゃいました。3部構成5時間超。
全く飽きない。眠気もない。引き込まれて引き込まれて。
まさかね、まさか、こんな展開になるとは?の始まりのシーンから一気です。
一部、二部、三部 全てスキ無し、無駄無し、息つく暇なしです。
休憩時間中の続きが待ち遠しい気持ち、こんな気持ちいつぶり?
人間関係や、人間同士のコミュニケーション(友人、夫婦などなど)の根幹となる人間の気持ち、価値観、考え方、そこから導かれる生き方・・・こんなこと永遠に解き明かせないんじゃない?・・・なことに真正面から向き合って、ほんの一部ではあるけども、人間そのものを切り取る・・4人分。
そりゃ、5時間でも足りないですよね(笑)
まず、演出のキーであるキャスティングが素晴らしい。演技経験がほぼ無い方々を起用されたことが、作品にリアリティと説得力を生んでいると思います。テイク数も少なかったんじゃないのかなー?なんて勝手に推測。生々しく、体温を感じるんですよね、映像から。
演者のみなさん、最初はセリフ棒読み気味ですが、どんどん演じることに慣れてきた感じになり気にならなくなります。棒読み気味でも朴訥な感じが場面によっては緊張感、緩和を生み出してますし、あのなんとも形容し難い「間」。あれは演出なのか?いやいや、長回ししてるので演者たちが作った、いや経験がないからこそ生まれた「間」なのでしょう。
演技としては稚拙と言われるのかもしれませんが、僕はとてもよかった絶妙なのです。その存在が。
また、カメラワークは単調のようで、顔のアップ、切り替え多用で動きがうまれ、会話劇をより深く描いていると思います。なぜなら女優陣含め皆演者の表情が良いんです。
役柄と同じ生活されてるのでは?なんておもっちゃいます。全員。
あぁ、ここまででかなり書いてしまいましたが、もう少し。
さてさてお話。よくもまぁこんなお話つくれましたね!と驚嘆です。日本映画すごいじゃん!
4人の37歳の女性がそれぞれ異なる生活基盤のもと問題(問題の種)を抱えつつ生活していく。
それぞれの繊細な心の動き、微妙な違和感、心の中の揺れ動きを映像としてを丁寧に丁寧に、そうですねぇ例えるならひと針ひと針刺繍を作っていくかのように描いていきます。
若干、「ん?」と思うようなイベント出来事はあるものの、あまり気になりません。出来事で成り立つストーリーではなく、出来事によって変わる心情がメインだからかな?
本作は自分を知るとは?他者を知るとは?。
他者の中の自分。他者と対する自分。(色んな)社会の中における自分。それらを通じて「自分」を見出し、「自分に素直に」次の扉を開くまでのお話だと思います。もちろん他者も知る中で。
自分を理解し、認めて受け入れることはできているようでできていない。・・・自分自身と向き合う勇気がないからなのか?自分をわかっていると勘違いしているから?
いや、何かから(ひとそれぞれの手枷足枷)解き放たれていないからかもしれないです。
自分を理解し、受け入れ自分に素直になる。。。。素直に行動する。。。素直に求める。。。
その結果はもしかしたら一般的に言われる幸福ではないかもしれないし、一般邸に言われる苦労しかないかもしれません。自身の置かれている立場や環境によって変わるのでしょう。
しかし自分に素直になるとは揺るがない強さを手に入れることだとも思います。
でも、人間としてはもっとも幸せ(ハッピー)なのかもしれません。それが。
そして、わかったと思っても、また新たなことも発見したり調整が必要になったりするのでしょう。
そんなに単純じゃないですからね、人間なんて。何度も繰り返すのでしょう。他者と自分の「解り合い」を。
他者と自分の「解り合い」
それこそが、自身を前に進めるためのものであり、他者を前に進めるためかもしれません。
その時間こそが「ハッピー(を作る)アワー」なのかも?
それを実現してくれるであろう他者との時間は友人との時間。
短いながらも「ハッピー(な)アワー」。
ナイスな題名だと思いました。
こーいうドラマ、地上波で多くの方に見てもらいたいと心から思いました。
人間関係がやたら殺伐感が増し、コミュニケーション不足が言われている昨今だからこそ。
最後にこれからご覧になる方々へ。
一部で描かれるワークショップはしっかりと観てください。本作のテーマがぎゅっと詰まっています。