「.」死霊高校 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。原題"The Gallows"。BGMやSEを排除した正真正銘のPOV。'93年10月29日、原題の演目を行う舞台で事故が発生してしまう──丁度20年後となる前夜'13年10月28日から始まる首吊りがキーとなる物語。前半忍び込む三人は某作の工藤・市川・田代トリオを、屋根裏に逃げ惑うクライマックスは『女優霊('95)』を、そして肝心の恐怖シーンは『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズ('99~)を想起し、他にもJホラーの影響を多く受けてる印象。お化け屋敷の様な一作だが、夜の学校には行きたくないと強く思った。60/100点。
・大きな破綻やどんでん返し等は無いが、ストーリー自体はシンプルで有り触れており、画面もどこかで観た様な既視感に溢れていて新鮮味は無い。ただ無難に叮嚀に作られているのは伝わった。POVによくあるこのシチュエーションで撮影するかと云う違和感も停電によりカメラのライトやモバイルの灯を頼りにしているので撮り続けられていると云う合理的な設定がなされている。
・“リース・ハウザー”のR.ミシュラー、“ファイファー・ロス”のP.ブラウン、“キャシディ・スパイカー”のC.ギルフォード等、役名のファースト・ネームは実名から名付けられており、同一である。但し“ライアン・シューズ”のみ、キャラクターになりきる為、役名と実名が同じになっている。亦、(共同)製作・脚本・監督のT.クラフは、観客席から舞台の演出をつける“シュウェンディマン”先生役で出演も果たしている。
・キャスト・スタッフを含めた製作者の若い平均年齢に驚かされるが、撮影現場で起こった怪奇現象や裏噺、NG集、(二種類ある別のエンディングを含めた)カットされたシーン等が紹介されたDVDに併録の「特典映像(ギャラリー)」が一番愉しめた。
・冒頭の舞台シーンの撮影時、観客として集められたエキストラには違うリハーサルを繰り返し行い、本番で初めて役者を吊るした為、エキストラのリアクションはリアルなものである。どこ迄カメラを回すか、何も知らない観客が救急車を呼ぶ前迄に種明かししないと……等、上記の「特典映像」内で製作側が楽屋で相談しているシーンが収録されている。亦、同「特典映像」内で、リアルな演技を惹き出す為、打ち合わせに無い仕掛けで撮影を行った際、録られた出演者のリアルな悲鳴は、アフレコで別のシーンに使ったと明かされている。
・エンド・クレジットに"In memory of Charlie Grimille"と献辞が流れるが、勿論これはもっともらしくリアルさを増す為のフェイクである。
・照明が明滅を繰り返し、画面がグラつき始める事が誰かが死んだり、行方知れずになると云った不吉な事が起こる前兆の描写とした不文律の元、製作された。亦、スタントの殆どは出演者自身が行い、CGI等のポスト・プロダクションは最小限で済んだらしい。
・ロケは編集、(共同)製作・脚本・監督のC.ロフィングの故郷であるネブラスカ州ベアトリスで行われた。舞台となるロケは、カリフォルニア州フレズノの退役軍人記念講堂で行われた。'12年に完成していたが、その後、ワーナー・ブロス、ニュー・ライン・シネマ等に売却され、若干の修正(削除されたシーンは前述の「特典映像」で観る事が出来る)・追加撮影等を行い一般公開された。
・鑑賞日:2016年3月21日(月・振替休日)