「彼女に捧ぐ」ぼくとアールと彼女のさよなら 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
彼女に捧ぐ
ごく平凡な少年と白血病を患う少女。
日本だったら“難病の中心で、悲恋をさけぶ”となるが、ハリウッドだとコメディタッチ。
でもちゃんと、青春の瑞々しさ、爽やかさ、切なさやじんわり染み入る感動も織り交ぜ、巧みな作り。
映画オタクの高校生グレッグ。
母親から近所に住む同級生のレイチェルが白血病である事を聞かされ、彼女の話し相手になるよう命じられるのだが…。
初っぱなからトチるグレッグ。母親から言われ、仕方なく…と口が滑ってしまう。
レイチェルもうんざり。面倒臭そう。
一応形だけでも相手する事に。
愛想尽かされ、これ一回きりと思いきや、また呼ばれる。レイチェルの母親からも気に入られて。
別に何をする訳でもなく、他愛ない話を。
次第に友情を育んでいく。
二人の関係が恋愛ではなく友情なのがいい。
勿論淡い想いは徐々にあったかもしれないが、くっつきそうでくっつかないその距離感が初々しい。
それに、レイチェルは死なない。グレッグがそう語っている。
なら、安心して見れる…?
グレッグは趣味で自主映画を製作している。
世界中の名作映画を内容もタイトルもパロディー化したもの。そのタイトルセンスが結構ウケる。
一人でではなく、親友…いや“仕事仲間”のアールと。
アールも一緒にレイチェルを見舞うようになり、自主製作映画を見ながらワイワイ。
グレッグは勘弁してくれ…な顔だけど。
いつしかレイチェルの為に映画を作ろうと思い立つ。
…のだが、
レイチェルの病状が悪化し始める。化学療法で髪の毛も抜ける。彼女は死なないんじゃ…?
気丈だったレイチェルもさすがに気持ちが不安定に。
グレッグはそんなレイチェルと関係がぎくしゃく。
加えて進路や映画製作も行き詰まり。
レイチェルの事でアールとも喧嘩。
レイチェルが入院。
プロムの日が近付く。
一度レイチェルを誘うも、断られていたグレッグ。
タキシードでめかし込んだグレッグが向かったのは、病院。
二人だけのプロム。完成した映画を一緒に鑑賞。
が、遂にその時が…。
“彼女は死なない”と言っていたが、実はそれ、そうあってほしい願望であった事が最後になって分かる。ここ、胸打ったね…。
アールとも仲直り。
葬儀を終え、レイチェルの部屋を訪れたグレッグは…。
本当に彼女は、素敵な素敵な友達だった。
自分を“ビーバー顔”と自虐するグレッグ。トーマス・マンが好演。
持つべきものは友。ナイスガイなアール役のRJ・サイラー。
だけど何と言っても、レイチェル役のオリヴィア・クックに魅せられる。
小品だが、良作。
ユーモラスで、切なさの後に温かい感動に満たされる。
作品規模やスタッフ/キャストのネームバリューから日本未公開は仕方ないのかもしれないが、公開されていたら口コミで愛されていただろう。
この映画をまだ見てない人たちへ捧ぐ。