「僕は、これほどまでに身を犠牲にして「無私」の人になれるだろうか?」殿、利息でござる! 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
僕は、これほどまでに身を犠牲にして「無私」の人になれるだろうか?
中村監督の、泣きと笑いのさじ加減はいつもいい。
江戸時代、これほど無私の人が、かつて日本中のいたるところに一人や二人は必ずいたのだ。もちろん中には悪代官だっていたし、本物の守銭奴だっていたろうが、少なくとも、世間にはつつましさを美徳とする風潮があった。裏返せば、誰にだって贅沢をしたい願望は心に奥に眠っているのだが、それを自律し、人様に恥ずかしくない自分でありたいという大人たちがいっぱいいたのだ。
こんな話に近いのは、帚木蓬生の「水神」という小説があるが、ぜひこちらも映画化してもらいたいものだと思った。
この映画、ケチをつけるとすれば、予告やタイトルから受ける印象と、実際の内容がずれていること。はじめ、コメディかと思ってたくらいなのだ。映画自体は、十分泣ける話じゃないか。銭で丁髷なんてしないでもらいたい。
『駆け込み女と駆け出し男』と同じだ。映画を見せる前で損をしている。
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