「火星で生き残る●●な方法」オデッセイ ユキト@アマミヤさんの映画レビュー(感想・評価)
火星で生き残る●●な方法
火星旅行も今や夢物語ではなくなりました。そういう中で出てきたのが本作「オデッセイ」です。
とある事故のために、火星に1人置き去りにされた宇宙飛行士の話です。
監督はリドリー・スコットさん。
植物学者マーク・ワトニーは宇宙船に乗り込んで、はるばる火星までやってきました。
そこで仲間たちと調査中、大きな砂嵐に遭遇。彼だけが吹き飛ばされてしまいます。交信は途絶。生命反応なし。
船長とNASAは、やむなく彼を死亡したものとみなします。
そこでミッションは中断。
宇宙船は火星を離れ、地球への帰還を目指します。
しかし植物学者マーク・ワトニーは生きておりました。
いくつもの偶然が重なり、彼は奇跡的に助かりました。
しかしマークが意識を取り戻した時、すでに仲間は宇宙船とともに、地球へ向けて帰路についている最中。
火星という、荒れ果てた茶褐色の地表の上。
マークは、たまたま人類という「一個の生き物」として取り残されてしまいました。
火星には既に実験棟がいくつか建てられています。
その中のひとつに彼は避難します。幸い実験棟は電気も酸素もありました。
体の治療をし、彼は残った水と食料をかき集めてみます。
次に火星にやってくる探査機は四年後。
食料はあと31日分です。それに水も全く足りない。
人間、「火事場の馬鹿力」とでも申しましょうか、可能性が1パーセントでもあるなら、生き残れる方法を考える。
1日でも長く生き残る方法は何か?
それを考えるわけです。
彼は植物学者です。
「そうだ、火星で植物を育てよう!」
ちょうど、じゃがいもがありました。
じゃがいもの種を植えます。
しかし火星の砂地では、とてもじゃないが植物は育たない。
ではどうするか?
肥料と水が必要なんですね。
まあ、肥料と言えば聞こえはいいですが、要するに排泄物。
ズバリ言えばウンチとおしっこです。
幸いにもその「備蓄」は嫌というほどありました。
彼は真空パックされたその「排泄物」を一つ一つを開けて、水と合わせて「肥料」を作るわけですね。
全くもって「ビッチな作業」なわけですが、まぁ生きるためです。
その後、彼は水を作る事にもトライします。
作業の際、彼はモービルと呼ばれる車を動かすんですね。
ある日、地球のNASAが、火星の地表で、モービルが行ったり来たりしているのを偶然発見します。
「まさか? マークは生きている!!」
NASAのスタッフは騒然となります。
しかしマークと通信をする手段がないのです。
火星にいるマークも、なんとか通信手段を確保しようとします。
そして見つけたのが、もう使用済みの、かつての無人探査機。
「マーズ・パスファインダー」
この機械の中には通信回路があります。これを生き返られせば、通信できるかもしれない。
彼のチャレンジは、次から次へと続きます。
マークは、はるか遠く離れた地球へ、無事に還る事ができるのでしょうか?
という訳で……
一時期、リドリー・スコット監督は、超大作ばかり撮っていた時期があります。
やたらと大勢の群衆を登場させる。太古の神話みたいなものを、とても大げさな演出で撮る。
そういう作品群の予告編は、見ていているだけで、もう胸焼けがするほど、満腹感いっぱいでした。
僕はしばらくの間、リドリー・スコット監督作品を避けていた時期がありました。
大勢の群衆を動かす快感に、監督自体が酔ってしまっている、中毒症状ではないかな? と感じていました。
そんな中で、ようやく良いなと思えたのが「アメリカン・ギャングスター」という作品。
デンゼル・ワシントン演じるギャングの親玉と、ややダーティーな警官役、ラッセル・クロウの、がっぷり四つに組んだお芝居。
これは見応えがありました。
以前の超大作なんかよりよっぽど迫力があった。
「アメリカン・ギャングスター」では、2人の役者にフォーカスが当たっていました。
本作では、マット・デイモン演じる、植物学者で宇宙飛行士、マーク・ワトニー。ほぼ、彼の一人芝居が、作品の重要な鍵になります。
本作では、大きく分けて3つの舞台設定があります。第一にマーク一人が取り残された火星。第二にマーク以外のチームを乗せた、地球に向かう宇宙船。そして地球上のNASAとスタッフ。これらの舞台を組み合わせる事により、観客を飽きさせない、巧みな工夫がなされております。
地球以外の星に取り残されるという設定。そこで忘れる事ができない作品があります。
「月に囚われた男」という秀作です。
低予算で、いかにメジャーに負けない、面白い作品を作るか?
その心意気、と言いましょうか、私はこの作品のレビューで
「お見事、あっぱれだ!!」と褒めちぎった覚えがあります。
メジャー映画が取り上げる手法として、ベストセラー原作の映画化、そして有名俳優と有名監督、こういった要素があれば、多くの予算を獲得する事が可能でしょう。
しかし、「月に囚われた男」は、低予算、マイナーな作品にもかかわらず、予算をふんだんに使った大作に負けず劣らず、面白いのです。おそらく、リドリー・スコット監督は「月に囚われた男」を観た事でしょう。
マット・デイモンの一人芝居をもっと観客に見せる、という演出手法もあったでしょう。
ただ、その場合、「月に囚われた男」の焼き直しか? という疑問も出てしまいます。そのあたりをよく分かった上で、バランスよく、3つの舞台を交互に見せてゆく。そういう手法で、本作は独自色を出す事に成功しています。
様々な超大作をこなしてきたリドリー・スコット監督ならでは、の演出ではないかと思います。