「安心してください、生きてますよ(笑)」オデッセイ ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
安心してください、生きてますよ(笑)
不慮の事故により火星に置き去りにされた宇宙飛行士・ワトニー。食料も酸素も限られた状況下で彼が生きている可能性はゼロだ。誰もがそう思っている中、彼はビデオブログを作り始める「安心してください、生きてますよ(笑)」と。
火星版『キャスト・アウェイ』を想像していくと飛んだ肩透かしを食らう。確かに使える物をフル活用しながら生き延びる策を模索する姿は共通するが、どうにもこうにも“とにかく明るいワトニー”さん。絶対的ピンチなのにユーモアセンスを失わなず、落ち込むことなく、火星での生活を満喫していく。彼の愚痴の吐き出し口になるビデオブログはいつしか観客に向けたメッセージとして機能し、ワトニーに親近感を覚えてしまう。
救出作戦を練るはずのNASAもどこかマイペース。「ワトニーは生きている、助けなきゃ!」「オイオイ、葬式だって済ませてるんだぞ、今更どう説明する」って、それでいいのか!?(笑)
自分がこんな状況になったらこんなにポジティブにいられるだろうか?自分が救出チームの一員だったら、彼の生存をここまで楽観視できるだろうか?善人ばかりの登場人物を含め、人間的なリアリティはすこぶる弱い。が、この作品の楽しみ方は、これはコメディだ!と割り切ること。シリアスさや感傷的な要素を求めてはいけない。むしろ、孤独・絶望という状況に立ち向かうには、ユーモアとポジティブ思考、そして楽観主義こそが最大の武器であるということを教えてくれる。さぁ、場違いなディスコミュージックを聴きながら、ノリノリで生きる術を探ろうではないか!