「トムホランドは新しいヒーロー像を生んだ」スパイダーマン ホームカミング うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
トムホランドは新しいヒーロー像を生んだ
映画全体の感想はともかく、昔からの「スパイダーマン」ファンで、映画は全部見たしコミックもたくさん見ているので、まともな評価は下せません。どうしたってファン目線で語ってしまうからです。それでも強引に今回のホームカミングに点数をつけるならば、4点。それは、機種変したあとの馴染まない感じにも似ていますが、いずれ馴染んでしまえば「やっぱりこれで良かった」となることでしょう。
不満はたくさんあるんです。特に気に入らないのが、スパイダーマンをそこらへんのにわかヒーロー気取りにしてしまったこと。とにかく弱すぎます。トニーが巨費を投じて開発したスーツで、ドローンが飛び立ったり、人工知能のカレンと会話しながら船の沈没を防ごうとしたり、ヒーターが付いていて凍えなくても済んだり。。。そんなことしなくても、スパイディは巨悪と戦ってきたし、超感覚でライフルの狙撃なんかもよけられる「クモ人間」だったはずです。スーツを取り上げられて途方に暮れたり、ワシントン記念塔に登って高さに震えるスパイダーマンなんて。。。
それから、映画が長すぎます。コミカルに作ってある本作は、基本的にヴァルチャーとの戦いに明け暮れていきますが、そのほかの要素にアベンジャーズにスカウトされたピーターのリクルート活動とトニー・スタークとの絡み、それからサイエンス部の活動を中心とする学園生活、そしてあこがれの彼女とのホームカミング・パーティまで、逆に言えば、よくこれだけまとめたなとも言えますが、一息にわーっと楽しめる内容にしては本当に長い作品で、それほどの大作感もないので、子供は絶対に飽きると思います。
それでも、お気に入りの要素もたくさんあります。
一番は何といってもトム・ホランドでしょう。彼の存在抜きには今回のスパイダーマン映画化は成り立たなかったはず。そう思えるほど、ピーター役にはまってます。彼はあと5年はピーター役から卒業できないでしょう。30歳を過ぎても高校生を演じ続けたマイケル・J.フォックスを彷彿としますね。
a film by Peter Parkerというキャプションで始まる自撮り画像は新鮮な驚きでした。
ピーター・パーカー監督作品という意味にもとれる、アベンジャーズでの活動を皮切りに、彼の学生生活に導入する非常に上手い演出でしょう。
くしくも、ピーター役のオーディションを受け、結果待ちになった状態のトム・ホランドが、エージェントからの連絡を待ち続けたように、担当者のハッピーはピーターの活動には全く興味がないという。このシチュエーションが、とてもリアルに映るのは、彼がピーター役を射止めるまでの心理を実際に経験しているからでしょう。そもそも、ティーンエイジャーの多くが、「何か」になりたくて、AKBの研究生になったり、声優の専門学校に通ったり、ダンススクールに高い月謝を払ったりしている実情は、皮肉にも今のピーターの姿そのもので、共感できる人も多いのではないでしょうか。
映画キャンペーン展開も独自のもので、トム・ホランドが自らホストを務めた映画の紹介番組では、この映画の魅力をたっぷり紹介してくれますが、それはアベンジャーズ活動を動画でアップするピーターとうまくシンクロして、彼は役者と言うよりも、プライベートすべてをピーター役に捧げた印象を受けます。
辛口の点数をつけといて何ですが、私自身はこの映画、お気に入りの一本で、既に2回劇場に見に行ってますが、あと1回は劇場に運ぶつもりでいます。細かいことが気になってしょうがないんです。参考にならないでしょうが、ファンには満足の出来栄えだった、とお考え下さい。子供さんと一緒に見に行くのはつらいかも知れません。
2017.8.13