「グイグイ引き込まれる傑作映画だが注意が必要」ちはやふる 下の句 ihitさんの映画レビュー(感想・評価)
グイグイ引き込まれる傑作映画だが注意が必要
公開初日の朝一に観た。たたみ掛けるような展開の中、広瀬が千早の心情を見事に表現、グイグイと引き込まれる映画だが、上の句で提起された幾つかのテーマが完結されていなかった。続編ありと聞き納得したが、全体構成が変わるので、日を改めて上下通しで観てみた。結果、元々3部構成の予定で、もし低評価なら上下2部で打ち切る作戦だったと見た。原作の大きさと制作リスクを考えればやむを得まい。
上の句の評価ポイントは、広瀬と千早のイメージのシンクロ、20歳超役者の演技と本物の高校生女優の演技のシンクロ、弱小かるた部の都大会優勝の感動的表現だろう。広瀬はやり切ったが、20歳超の野村は苦しんでいた。ただし広瀬には視覚イメージだけが要求され、心情表現は殆どなかった。
下の句の評価ポイントは、千早の心情表現、千早が越えるべき大きな壁の出現、仲間が支え合う力の感動的表現だろう。再び広瀬はやり切ったが、壁として下の句から登場の松岡がどうしても高校生には見えなかった。彼女の「上手な演技」は、広瀬を始めとする瑞沢かるた部5人の「お芝居じゃないお芝居」の独特な魅力を薄めていた。
最近は、スレ役をお決まりパターンで演じる役者が多く、素直さやひた向きさをナチュラルに演じられる役者は少ない。本作では、要所要所での広瀬のナチュラルな泣きや笑いの表情が強烈な印象を残し映画全体を彩っていた。彼女のアイドル的な容姿だけに注目し揶揄する声もあるが、本作での彼女の熱心で直球な演技を高く評価したい。
蛇足だが、続編は広瀬が高校生のうちに撮り終えてほしい。
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