「日本的な恐怖感は出ているものの…。」残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋 Fate number.9さんの映画レビュー(感想・評価)
日本的な恐怖感は出ているものの…。
不気味な現象が起こるマンションの謎を解くために、その土地や建物にまつわる過去の因縁を探っていくというシチュエーションはミステリー的な要素もあって興味を惹く。
ただ、その過去の因縁話も怖いと言えば怖いんだけど、ひとつひとつの因縁にはこれと言った関連性が無いので、結局、どんなに追って行ったところで現代の怪異の解決には直結していかないもどかしさが終始つきまとう。その情報の入手方法も、たまたま当時の事情をよく知る人がまだ生きていたり、当時の詳しい資料が見つかったりという偶然ばかり。因縁が「穢れ」として連鎖増幅していくのが怖いと言うのは分かるんだけど、それが登場人物の過去や家系と関連したり、新たな真実が浮上する事で謎を解明する手掛かりになったりと言った展開にならないので、どうしても見ていて、「…だから?」と言う気分になってしまう。
また、ホラーとしての完成度で見ても、リアリティを出そうと抑えた恐怖演出が地味すぎる一方で、安っぽいCGの幽霊を何度も出したりと、微妙に演出センスが感じられない。あまりこういう「お化け」や「怪奇現象」をビジュアル化し過ぎると、「精神的」な怖さよりもゾンビや猛獣に襲われるような「物理的」な恐怖感にシフトしてしまうので逆効果。その辺の匙加減にこそ、ホラー映画制作のセンスが問われると思う。
出演者の演技も、「不安そうな感じの表情をしよう」とか「怖がってる話し方をしよう」と気張り過ぎて、返って不自然になっている(これは監督の演技指導も悪いけど)。それに加えて、ぼそぼそとしゃべるセリフがやたら小声で聞き取りにくいので、ボリュームを上げると次のシーンではやたら効果音がデカくなったりと、内容と関係ないところでもイライラさせられた。なんか邦画ってこういう音声バランスが悪いものが多い気がする。
結局、ラストも特に何も解決しないまま「穢れ」も残り、「祟り」として増幅し続けるという予想通りのオチ。まあ、これ以外にはやり様が無いのかなあ…。