「地獄から来た勇者ども」スーサイド・スクワッド 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
地獄から来た勇者ども
DC映画の前2作は、映像的には物凄いしアクションにも興奮
できたのでいちおう平均以上のスコアは付けたのだけど、
なんだか重くて堅苦しくてイマイチ印象が良くない。
(まあ僕は昔からザック・スナイダー作品とは相性が悪い)
その反動もあり、
監督が異なる上にイカした&イカれた名悪党大集合という
この『スーサイド・スクワッド』は楽しみにしていた。
クイーンの名曲『ボヘミアン・ラプソディ』が見事に
ハマった予告編なんて見た日にゃテンションぶち上げですよ。
フォー・ミィィーーーー!!って。(←うるせえ)
なので僕が本作に期待していたのは大きく2点。
個性的過ぎる名悪党(ヴィラン)達の大暴れと、
前2作の堅苦しさをブッ飛ばすトチ狂ったユーモアだ。
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で、まあ、結論から書くと、楽しかった。
イカれたキャラにイカれたユーモア、期待したものは
キッチリ見せてくれるし、予告編だけでは全く
予測のつかないストーリー展開も良い良い。
予告で敵らしい敵が登場しないので不思議に思っていたが――
いやいや、エンチャントレス、アンタ敵だったの!?
そんで救出対象のVIPってウォラーおばさんかい!
しかも助けてからすぐ捕まるんかい!みたいな。
単に『悪党集結させて敵やっつけます』という流れではなく、
身内がいきなり最大の敵になったり、本来のターゲット
とは縁も所縁も無いジョーカーが乱入してきたり、
状況が二転三転するシナリオが面白い。
ヴィラン一挙紹介の序盤は賑やかで楽しいし、
エンチャントレスの暴走から“スクワッド”出動までの流れ、
後半から矢継ぎ早に盛り込まれるアクションシーンなど
最初から最後まで全く飽きずに観ることができた。
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“スーサイド・スクワッド”の主要メンバーも個性的。
印象的なのはやっぱデッドショットとハーレイ・クインかね。
デッドショットは原作と比べてちょっと優し過ぎるが、
娘想いなところや、同じような境遇の仲間達に対しての
漢気溢れる対応など、この作品単体として見れば
これはこれでカッコいい。百発百中の銃捌きもシビれる。
カワイイ顔して敵をバットで撲殺しまくるハーレイ・クインも
こすっからく見えて実は純情一直線なのが魅力的。
悪魔も惚れる献身ぶりで、ジョーカーとの最高に
迷惑なバカップルぶりが微笑ましい(か?)。
悲嘆に暮れながらも他人には涙を見せない健気さも良いね。
エル・ディアブロやキラークロックといった他のメンツも
自分達が世間から見れば化け物やクズであることを
重々自覚しているが、悪党にも悪党なりに破っては
いけない一線や譲れない矜持(きょうじ)がある。
まあちょっと根の善い人ばっかな気もするが、
てんでんばらばらな彼らが、各々の誇りをかけて
団結するクライマックスの流れにはグッときた。
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けど、残念だった点も幾つか。
ひとつ目はメインキャラの書き込み。
本作にはざっと10人超のヴィランやヒーローが登場する。
2時間の尺で捌き切れるの?と不安視していたがやはり、
デッドショット、ハーレイクイン、エル・ディアブロ以外は
キャラ立ちがイマイチだったり特徴的なアクションが
少なかったりと薄味になってしまった感アリ。
特にミス・カタナは(見た目と日本語以外)目立たないし、
キャプテン・ブーメランなんて一番好き勝手やってる
最高のキャラなのに、暴れっぷりが足りず勿体無い。
ブーメランも姑息な手も、もっと使ってほしかった。
あ、スリップノットは最初から死相が出てたから
大丈夫(笑)。名前通りのスベり知らずな死にっぷり。
もうひとつはアクションシーンの演出。
派手なシーン満載で楽しいんだけど、色々とアラも目立つ。
例えば"スクワッド"のメンツが初めて共闘する市街戦シーン。
いよいよ戦闘開始!というシーンなのに、全体的に
暗くてキャラの動きや敵の姿は見辛いし、随所に
挟み込まれるスロー演出のキレも今一歩。
ハーレイ・クインのエレベータバトルが挟み込まれる
タイミング、クライマックスで主人公たちが順番に
攻撃して吹っ飛ばされるくだりなども、編集が
ブツ切りに感じるというか、流れが悪い。
ちょっと不安視してはいたのだけど、
監督のデビッド・エアーは過去作を観ても硬派で
リアリティのある銃撃戦は間違いなく得意な方だが、
本作のようにユーモアもケレン味もたっぷり要求される
アクション映画を演出したことはこれまで一度も無いハズ。
今回はそんな彼の苦心が伝わってくるような編集なのである。
それでも、ユーモアセンスはあんまり無い
監督さんなのではと思っていたので(←コラ)、
思っていたよりユーモラスなシーンがふんだんに
盛り込まれてたのはひと安心というか何というか。
もうひとつ不満点というか不明点。
エンチャントレス姉弟って一体何がしたかったのかしら?
あれって落雷兵器兼メタヒューマンを呼び出すポータル?
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とまあ、
冒頭で書いたDC映画前2作よりアクション演出には難がある。
だけど、キャラクターの魅力やユーモアという面では
断然こちらに軍配が上がると思います。楽しかった。
スコアは同じ3.5判定としたが、個人的には『BVS』よりこっちがやや好み。
<2016.09.10鑑賞>
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余談:
ジャレッド・レト演じる今回のジョーカー。
狂気と混沌のヒース・レジャー版は踏襲せず
(まああんなの本作に出たら話メチャクチャになるし)、
銀歯と入れ墨を除けば原作寄りになってて自分は好み。
ニコルソンより太っ……ゴホン、体型も原作に近いし。