劇場公開日 2016年9月10日

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「ジョーカーのひとり暴走」スーサイド・スクワッド ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ジョーカーのひとり暴走

2016年9月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

興奮

『マン・オブ・スティール』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』に続くDCEUの三作目でございますな。
自分、これ結構楽しみにしてまして。「おお!やっと来たか!」という感じで。
いやあ、だってねえ?マーベルの『シニスター・シックス』より先んじて、アメコミ史上初のヴィラン映画になったじゃないですかぁ(他を知らないので適当に言ってますけど)。ジョーカーも出る!ハーレイ・クインも出る!しかも彼らが主役!と来たら観ない理由が思い当たらないでしょう。で、鑑賞しましたよ。

初登場のキャラクターを出し惜しみなく大量投入。にも関わらず「さあ皆さんご存知の!」な体でサクサクと動かしていく方向性は、前作の『バットマン vs スーパーマン』から変わってないですな。MCUよりかなり出遅れた感じが否めないDCEUですけど、この「単独主演作を作らず先にアンサンブルで参加」させる手法を一歩先に用いたのはDCEUですよね(『シビルウォー』もまあやってるっちゃやってるんですけど)。そういう大胆さがこのユニバースの魅力でもありますね。
んでキャラ紹介もそこそこに、ポンポンと展開されるストーリー、アクションもなかなかにグルーヴ感があって。
中盤から用意されているラスボスが繰り出す大風呂敷なVFX乱舞は劇場のスクリーンで観てこそ!の大迫力で、これこそ荒唐無稽な映画だ!アメコミ映画の醍醐味だ!とワクワクさせてくれます。ただ、ラスボスとヴィラン達の戦闘能力との差が、これまた開きがあり過ぎて、少し滑稽というかね。
まあでも。なかなか楽しめましたよ。楽しめました。楽しめたんですけどね、うーん。なんですかね。

画的なダイナミックさには胸が踊りますし、脚本だって悪くないし、ハーレイ・クインのキュートさもたまらなく魅力的です。が。が、圧倒的に編集が上手くないんですよ。「えっそんな味気ない幕開け?」て感じに余韻を作らないし、繋げ方が唐突だったり、時間経過を感じさせるのが下手くそだったり。兎に角「やりたい!これ!これがやりたい!次!次!」て、先を焦ってる風にしか見えなくて。
だからか展開に必然性も余り感じません。行きあたりばったりというかね。というのも、伏線を殆ど張らないからなんですよ。例えばアバンタイトルで思わせぶりな演出でも振っておけばいいのになあと。それだけでも掴みって結構違ってくるでしょ。ミステリーでもないので確かに伏線ばっかりじゃアレですけど、ほんの思わせぶりを一掴み振り掛けるだけでも大分違ってくるのになあ、と。

そして最大の難点はジャレッド・レト扮するジョーカーでしょうなあ。実際として、彼の出番ってかなりカットされてるらしいんですけど、演技を見るとこれが納得です。映画のカラーと全く合致してない。ひとりだけ怪演が過ぎるんです。やたらと怖いし。平たく言うと「浮いてる」。
今までジョーカーを演じてきたジャック・ニコルソンやヒース・レジャーには負けない!という意気込みがきっとあったのだろうし、役作りも相当にして、これまた迫真の演技でやり切ったのだけども。気概は諸に伝わりましたけども。
デヴィッド・エアー監督はちゃんと映画のカラーを伝えたんでしょうかね。また別のDCEUで一本作ってもらって、そこではっちゃける彼を観てみたいですね。

以上です。はい。

ロロ・トマシ